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米原子力規制委員会の福島事故議事録からの教訓

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

それにしても、10日間の議事録が3000ページに及ぶという事実にも驚いた。そこには生々しいやり取りまで記録され、公開できないとされた機密部分は黒塗りページで提示されている。それだけの、史上まれにみる10日間であったことは間違いない。

 NRCにおいても情報が不足していて混乱していた。しかし、その中にあっても、何らかの判断を示す立場にあった。3月末に見解の訂正を出したとき、NRCの幹部は「緊急事態では、限られたデータで判断を迫られるときがある」「判断をしないよりましだ」と語った。

 一方で、日本政府の情報発信は、事実を追認することに終始し、明確な判断を避け続けた。そして、信頼を失い、混乱を加速させていった。

 経験したことのない危機に際しては、思考が硬直し、判断も慎重になる。しかし、一瞬の判断の遅れが致命的にもなる。判断を出し続けることができるかできないか。たとえそれが、間違っているかもしれなくても、である。リーダーとして求められる資質の一つであろう。その重要性を今回の議事録は明示している。

 私自身は、

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