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情報文明の次に来るものと科学(中)

―人類史における情報―

広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)

前回のような基本的な把握を踏まえて、私としてはこうした「情報の進化(ひいては情報とコミュニティの進化)」を、人間の歴史の大きな展開の中でとらえ返してみたい。その大まかな枠組みを示したのがである。

ポイントはまず、人間の歴史の流れを大きく「拡大・成長」と「成熟化ないし定常化」のサイクルとしてとらえているという点である。この場合、いわゆる(1)狩猟採集社会(2)農耕社会(3)産業化〈工業化〉社会という三つの段階があり、それぞれが拡大・成長期(前半)とその成熟・定常化の時期(後半)に区分される。

 そして、これは私の仮説だが、それぞれの段階の前半から後半に至る時期は、いわば「物質的生産の量的拡大」から「内的・質的(ないし文化的)発展」への転換ととらえることができ、そのことと並行して人間の歴史において大きな変化が生じたと考えてみたい。

 すなわち狩猟採集段階では、そうした成熟期への移行において、近年の人類学などでさまざまに探究されている「心のビッグバン(精神のビッグバン、あるいは文化のビッグバンとも呼ばれる)」(=約5万年前に生じたと考えられる変化で、装飾品や壁画などの芸術作品など、シンボリックな思考を示す事物が一気に現れる)が生じる。

 また農耕段階では、おそらく農業文明が、森林の枯渇や土壌の侵食などによって最初の環境・資源制約に直面したことを背景にして、紀元前5世紀前後に哲学者ヤスパースが「枢軸時代」と呼び、科学史家の伊東俊太郎が「精神革命」と呼んだ現象、すなわち地球上の異なる地域において、普遍的な原理や人間にとっての内的価値を志向する思想群が「同時多発的」に現れる現象が起こるのである(ギリシャ哲学、中国での儒教・老荘思想など、インドの仏教、中東の旧約思想)。

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