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次の大震災に交流サイトは活躍できるだろうか?

本位田真一

本位田真一 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

昨年の東日本大震災では、Twitterやfacebookなどの交流サイト(SNS: ソーシャルネットワーキングサービス)が、安否確認、情報発信などの道具として大いに活躍した。先日、facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏が野田首相を訪問した際にも、首相は交流サイトの有意性について言及している。

 実は、震災時、私の研究室の一人の学生がたまたま東北に帰省していたのだが、携帯電話は繋がらず、メールを出しても返事がない状況がしばらく続き、たいへん心配した。各避難所の避難者名簿がネット上に公開されていたので、学生たちが手分けして調べていた。そんなとき、「今、宮城県仙台市。家の中、めちゃくちゃ。そして停電」というTwitterへの書き込みがあり、その瞬間歓声が上がり、研究室一同、大いに安堵したことを今でも鮮明に覚えている。

 それ以降、研究室内でも緊急連絡網の連絡先には、携帯電話と電子メールアドレスに加えて、各種交流サイトにおけるIDを登録してもらっている。そして、各交流サイトにおいて、研究室固有のグループを作成して、有事に備えている。

 さて、今や特に若い人にとっては、携帯電話やスマートフォンでアクセスする交流サイトは、仲間との常時コミュニケーションのための不可欠な道具になっている。電子メールが主として1対1の連絡手段であったのに対して、交流サイトでは、ちょっとしたコメントを仲間と共有する一体感を得ることができ、特に震災以降、絆を深めるためのとっておきの手段になっている。個人的には、facebookの最近の爆発的な普及は、「いいね!」ボタンにあると思っている。1回のクリックだけで仲間との絆を常時確認しあうことができることの意義は大きい。

 このような情報交流は携帯電話やスマートフォンが電池切れにならずに、いつでもネットにアクセスできることが前提になっている。しかしながら、最近は通常時においても、すでに通信量が目一杯になっていて、ネットも飽和状態にあるという報道もある。特に大きな災害時には、ネットにアクセスすることができにくい状態が起こる。仲間や親しい人と常に繋がっているのが当たり前という前提が崩れた時の心理的な不安感は計り知れないものがあるだろうし、パニックに陥った人間の心理として、ネットにアクセスできない時には、繋がるまでアクセスを繰り返すだろう。その結果、ネットへのアクセス頻度が想定を遥かに超えて増大し、よりいっそう、ネットはアクセス不能になってしまう。

 阪神大震災の時には、普及し始めていた携帯電話が固定電話に取って代わり、大いに活躍した。しかし、16年後の東日本大震災のときには、携帯電話の代わりに、ネットが活躍した。さて、次の大震災の際にもネットが活躍できるだろうか。

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