メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大飯原発、「フレーム問題」の罠〈上〉

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 人工知能や認知科学の研究者の間には「フレーム問題」という言葉がある。ものごとを計画するときに、どこまでを考慮すべきかをはっきり決められないというジレンマである。考慮すべき枠組み「フレームワーク」を決める難しさを表した問題である。

 問題を狭い範囲で考えると、その想定外の事態で、間違った判断をする。広く取りすぎると、問題が解決できない。しかし人間は、考えすぎて問題が解けなくなるわけでもなく、多くの場合は、それなりの判断をしているように見える。少なくとも表面的には、そのように見える。

 チェスや将棋のように問題の範囲が明確に限定される課題では、どこまで考えれば良いのかがしっかり定義されている。いわゆる「クローズドシステム」では、フレーム問題は発生しない。

 フレーム問題が発生するのは、問題の境界が定義できない「オープンシステム」だ。しかし、現実世界はオープンシステムである。これは、未だに解かれていない人工知能の最大の難問である。(人工知能学会の「フレーム問題」解説ページ)

 大飯原発3号機と4号機の第1次ストレステストの審査書を通読した。そこで痛感したのが、再稼働問題の前には「フレーム問題」が横たわっている、ということである。「原子力安全性のフレーム問題」ということもできる。

 今回のストレステストの注目点の一つは、福島第一の事故を反映して、地震と津波に伴う、全交流電源損失、サイト内発電設備の損害などを想定して、どの程度の炉心冷却機能を保てるかだった。

・・・ログインして読む
(残り:約1161文字/本文:約1791文字)