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科学技術白書は解くべき「問題集」だ

内村直之 科学ジャーナリスト

2011年3月11日の東日本大震災と大津波、それに続く東京電力福島第一原発事故を経験した私たち日本人は、「私たちはなにも知らなかった」ということも含めて多くのことを知ることになった。これまでに発表された報告書、リポートは膨大であるが、私たちはそれらと真摯に向かい合い、その「解答」を吟味しなければならない。このほど発表された『平成24年版科学技術白書』は、私たちが解かなければならない課題を集めた「問題集」なのである。

 私のパソコンの中や本棚には、震災後に出された多くのリポートがある。

・ IAEA閣僚会議に対する政府報告書(11年6月)、同追加報告書(11年9月)
・ 文部科学省・東日本大震災からの復興復旧に関する取り組みについての中間的な検証結果のまとめ(第1次報告書)(11年12月22日)
・ 政府事故調査・検証委員会中間報告書(11年12月26日)
・ 日本再建イニシアティブ・福島原発事故独立検証委員会調査・検証報告書(12年3月)
・ 東京電力・福島原子力事故調査報告書(12年6月20日)

 このあたりが主なところだろう。その他、各学会や研究グループからのリポートもある。たとえば、

・ 日本地震学会東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会・地震学の今を問う(12年5月)
・ 中央防災会議・東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震津波対策に関する専門調査会報告(11年9月28日)

 などがあり、日本学術会議も東日本大震災対策委員会を作っていろいろな提言を出している。夏には、政府事故調査・検証委員会の最終報告書、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の報告書なども出てくるだろう。その他、個人のリポートも書店のコーナーには山積みされている。その中でいったい何が問われ、何がどのように答えられているかを見定めずにはいられない。膨大なリポートの山の中で、私たちはどうしたらいいのだろうか。

 そんなことを考えながら、6月19日に発表された今年度の科学技術白書を読んでいたら、この第1章はよくまとまった「問題集」だと感じた。ここでは、

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