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アルツハイマー病予防を目指す大規模臨床試験が始まる意味

佐藤匠徳 生命科学者、ERATO佐藤ライブ予測制御プロジェクト研究総括

アルツハイマー病の予防を目指し、今年の終わりから来年早々に米国の政府や財団がスポンサーとなって3つの大規模臨床試験が始まる。今回の臨床試験の大きな特徴は、まだ病気を発症していない健常者が対象であるという点である。つまり、アルツハイマー病を発症するまえに治療を施し、病気にならないようにしてしまおうという試みである。これまでは、予防治療といえば感染症のワクチン治療などがほとんどであった。しかし、これからの時代には、感染症以外の病気を予防するための医学・医療の発展が必要だと思う。それは国民の生活の質の向上につながるだけでなく、超高齢社会における医療費の負担などによる経済的圧迫を回避するためにも、重要な鍵を握っていると筆者は考える。

 アルツハイマー病を患う確率は、65歳以上では、5歳ごとに2倍になる。2055年には日本の全人口の40.5%が65歳以上になる(内閣府発行の2011年版高齢社会白書)ため、全人口の4〜5%(つまり20〜25人に1人)がアルツハイマー病患者ということになる。現時点で、アルツハイマー病に対する特効薬が存在しないことを考えると、これは恐ろしい数字である。

 一方、

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