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新しいプライバシー概念が必要だ

本位田真一 本位田真一(国立情報学研究所副所長/計算機科学)

Yahoo! JAPANのメールサービスで、メールのタイトルや本文の機械的な解析が9月19日から始まった。解析結果は、利用者の関心と関連性の高い広告を表示するために使われる。たとえば、利用者が国内旅行についてのメールを読んだり書いたりしていたら、国内旅行に関する広告が表示される可能性が高くなるというものだ。 

 Yahoo! JAPANは、この機能を今年8月から導入することを計画していたのだが、総務省から「待った」がかかり、開始を延期せざるをえなかった。「『メールの内容が読まれて、広告に利用される』という同意を各利用者から明確に取っているかどうかが重要だ」と指摘されたのである。そこで、メール本文などの解析を望まない利用者にはいつでも解析を中止できる方法について提示するなど、利用者からの同意を得る仕組みを整え、ようやくこの新広告導入が容認された。

 実は、同様の広告手法は海外にサーバーを置いているグーグル等のメールサービスではすでに実施されている。メール解析広告の収益性は高く、グーグルが広告事業の底堅さを評価されて株価が5年ぶりに最高値を記録したとの報道が9月25日にあった。海外にサーバーを置いていれば日本の電気通信事業法などの観点から規制を受けることはないのに、国内にサーバーを持つ事業者だけが同様のサービスを提供できないとなれば、メール解析ができる海外事業者に広告市場を押さえられてしまうという危機感がYahoo! JAPAN側にはあった。

 プライバシー保護の観点でサービス規制を議論することはもちろん重要である。スマートフォンの利用者情報の取り扱いについても、総務省の研究会が8月に「スマートフォン プライバシー イニシアティブ 利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション」という報告書を発表したばかりだ。ただ、

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