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ノーベル賞続出でも改革し続ける教育行政:「Vision」はどこだ?

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

山中伸弥教授のノーベル賞受賞決定で、2000年以降の日本の受賞者は、現在は米国籍になっている南部陽一郎博士を含めて11人になった。列挙すると、次のようになる。

2000年 白川英樹(化学賞)

2001年 野依良治(化学賞)

2002年 小柴昌俊(物理学賞)、田中耕一(化学賞)

2008年 南部陽一郎、小林誠、益川敏英(物理学賞)、下村脩(化学賞)

2010年 根岸英一、鈴木章(化学賞)

2012年 山中伸弥(医学・生理学賞)

 実に壮観である。次は誰か? そう考えることが楽しくなってくるほどであり、逆にいえば、私たちはノーベル賞にかつてほどの熱狂や感動を感じなくなってきているほどである。

 ただし、この状況は、世界的にみると、際立って特異である。自然科学3部門における日本の受賞者は16人であるが、非欧米圏の国・地域で10人を越える受賞者を出している国は日本しかなく、その数も突出している。産業分野では押され続けている中国や韓国がノーベル賞受賞を悲願としているのと対照的である。

 これをみると、日本の教育組織は十分成熟していると考える方が自然である。しかし、日本の教育行政は、この事実を直視していない。日本人は自らの欠点には敏感で、長所には懐疑的であったりする。その結果、欠点ばかりを指摘し、20年にわたって「教育改革」が続けられている。

 私は山中教授と同年生まれなので、

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