メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大学に求められるもの

秋山仁 数学者、東京理科大特任副学長

文部科学省大学設置審議会の審査をパスしていた3大学を田中真紀子文科大臣が認可しないと発言し大騒ぎになったことは、まだ記憶に新しいだろう。結局は、従来通り、大臣が審議会の判定に追随する形で終わったが、大学の認可の在り方や日本の大学の質など、クローズアップされた問題は今後しっかり検討していく必要のあるテーマだ。

 今秋「東大が、香港大学やシンガポール大学に抜かされてアジアで3番目の大学になった」という報道が流れた。その報道の源は、毎年発表される“世界大学ランキング”である。ここでは、ノーベル賞やフィールズ賞を受賞した卒業生や教員の人数や大学の設備や蔵書数、教授の業績(研究論文の件数や引用回数)、学生と教員の比率、留学生の人数や外国教員の採用人数等を基に評価しているが、必ずしも順位通りではないように思う。

 例えば、ここ数年仕事で度々行く機会があったモスクワ大学は、それ程上位にはランクされていないが、教育・研究の質はすこぶる高いと思う。この大学のメインホールに足を踏み入れると、ドミトリー・メンデレエフ(周期律表を作成した化学者)、アンドレイ・コルモゴロフ(現代確率論の創始者)、レフ・ランダウ(量子力学の理論研究)、イワン・パブロフ(犬による条件反射の実験)などの歴史を刻んだ数十人のロシア人科学者たちの像が学生たちを出迎える。この荘厳な雰囲気の中、学生たちは自ずと志を高くもち、学問に専念するのである。

 若い頃、私が留学した米国のミシガン大学は、

・・・ログインして読む
(残り:約1493文字/本文:約2119文字)