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忘年会シーズンに恐縮ですが、アルコールの害のこと

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

忘年会、そして間もなく新年会と、お酒を飲む機会が多いときに無粋を申して恐縮ですが、実は、アルコールの有害使用を減らそうという動きが世界的に起きています。タバコが健康に悪いことは広く知られるようになりましたが、そのタバコの害よりも何とアルコールの害の方が世界全体で見れば大きいのです。そうと知れば、何とかしないとまずいと思いませんか。

 害の大きさを測るのは、それほど簡単なことではない。世界保健機関(WHO)が病気や事故などが社会に与えるダメージの大きさを表す指標としてよく使っているのが、DALY(ダリー、disability-adjusted life year)だ。「障害調整生命年」と訳されることが多いが、これだと意味がとりにくい。「寿命・健康ロス」というのが、内容をよく表す日本語だと思う。

 DALYは、寿命ロスと健康ロスを足し算したものだ。寿命ロスは、「死が早まることで失われた生命年数」だ。例えば50歳で亡くなった場合、50歳の平均余命がこれにあたる。健康ロスは、「病気や障害を抱えて生きるせいで失われている生命年数」として計算される。状態が安定するか死亡するまでの期間に、その間の「健康が損なわれている度合い(0~1の数値で表す)」をかけ算して出す。

 この度合いをどう決めたらいいかは90年代から研究が続けられ、主な病気や障害については数値が定まっているという。このルールに従って、たとえば糖尿病はこれぐらい、うつ病はこれぐらい、と計算できる。米国などでは、より適切な保健医療対策を立てるためにDALYを参考にしている。

 WHOが昨年発表したアルコール白書が、19のリスクファクターのDALYを紹介している。低所得層で「寿命・健康ロス」をもっとも大きくしているリスクファクターは、

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