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太陽系外惑星食の社会的意義を問われたら…

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 私の研究室の学生が、惑星食という史上初の極めて稀な天文現象を発見したので、先月記者会見を行った。およそ社会の役に立つとは思えないその内容を少し紹介してみたい。

 1995年に初めて発見された太陽系外の惑星(以下、系外惑星)は、今や800個以上を数える。その検出法は主に2つ、ドップラー法(惑星が中心星の回りを公転する反作用で中心星が周期的にふらつく速度をドップラー効果で観測)とトランジット法(惑星が中心星の前面をトランジット=通過する際に、一部が惑星によって隠され暗くなる一種の「食」を観測)である。トランジット法は、観測者がほぼ惑星の公転面上にないと観測できないため確率は低いものの、観測自体は比較的容易である。2009年にはトランジット観測専用衛星ケプラーが打ち上げられ、飛躍的に観測が進んだ。

 KOI-94(ケプラーが発見した94番目の惑星候補天体)は、特に4つのトランジット惑星が存在すると考えられている複数惑星系候補である。太陽系の場合、8つの惑星はほぼ同平面上を公転しており、しかもそれらの公転軸は太陽の自転軸と約7度以内でほぼそろっている(順行)。はたしてこれは太陽系だけなのか、それともより一般的な性質なのか?

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