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「手抜き除染」vs「アリバイ除染」―基本戦略の欠如が諸悪の根源

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

落ち葉や土砂を袋詰めせず、川に流した。高圧洗浄機から出る水を回収しなかった。ベランダや屋根は雑巾かブラシを使うことになっているのに、高圧洗浄機を使っていた――こうした現場を目撃した朝日新聞が、これらを「手抜き除染」として報道した。

 記事が出るや否や、福島県伊達市で除染を担当している半沢隆宏次長からメールをもらった。もっと大きな問題が「アリバイ除染」だと。

 「アリバイ除染」とは、公費を使って「除染をやりました」という形だけ重視することといえるだろう。効果、必要性、費用とのバランスなどを考慮せず、とにかくやる。業者からすれば、それで報酬を貰える。政治家は、住民に顔が立つ。だが、十分な効果がなければ、それは公費の無駄遣いに他ならない。「過剰除染」と言ってもいい。

 福島県の中でも、伊達市はいち早く除染に取り組んだ自治体として知られる。2011年5月に、仁志田昇司市長が市内全域の除染を決め、6月末には放射能対策チームが発足。市民生活部で地域振興に取り組んでいた半沢さんが、除染の専属担当に任命された。突然の任命である。今は原子力規制委員会委員長となった田中俊一氏が、放射能の専門家としてアドバイスをしてくれた。それを頼りに7月には小学校の除染を始めたのだった。伊達市の人々の奮闘ぶりは、2012年7月28日から8月15日まで連載された「プロメテウスの罠 除染の悩み」で紹介されている。

 私が半沢さんにお目にかかったのは、昨年11月、東京で開かれたある勉強会の席だった。そこで講演した半沢さんは、除染がなかなか進まない状況を語った。環境省の対応がとにかく遅い。しかも現場を見ずに会議室で決めている。そうした不満をもっともだと感じた私は、「除染 現場の工夫生かす仕組みに」という「記者有論」(12月8日付朝刊掲載)を書いた。

 だが、小さなコラムでは目立たない。1月4日朝刊1面に大きく出た「手抜き除染」の記事が、世間が忘れかけていた除染への関心を改めて呼び起こすことになったのは間違いない。

 なぜ、除染がうまく進んでいないのか。以下は

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