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教員の早期退職への苦言に物申す

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

下村博文文部科学大臣が「教員の駆け込み退職に苦言」というニュースが流れた。これは「パワーハラスメントなんじゃないかな?」と思った。民間の企業で、働けば働くほど給料が減ることが明らかな上で働かせ続けたら、世間から厳しく指弾されると思うのだけれど、学校では違うのだろうか?そもそも、早期に退職すれば報酬が高いという制度は、退職勧奨と同じである。それに従った人が非難されるというのはどういうことなのかなと思う。

 国家公務員の退職金カットの法案が閣議決定されたのは8月のことである。国立大学は「国立大学法人」という何とも分かりにくい名称に変わっている。そこで働く教職員は公務員ではない。しかし、準公務員という扱いで、この減額が実施される。その話が学内に出たのは秋になってからである。3年間で段階的に約500万円が減額されるという。さらに驚いたのが、年度途中の法案が今年度から実施されるということだった。今年度どころか、11月に原案通りに成立した法案は、1月には実施されている。

 あまりに乱暴なやり方に驚いた。あまりにもドライ過ぎやしないか、と。

 11月の法案成立時には、総務省から地方自治体にも同様の減額をするように要請が届いた。各自治体で対応に差が出ているが、例えば、渦中にある埼玉県をはじめ10都県は「駆け込み」で条例を改正して、2月からの減額となった。3月末まで働くと、退職金が100万円以上も減る。寝耳に水だった人も多いのではないだろうか。さらにドライである。

 ところが、少しでもリカバーしようと早期退職を願い出た人に対しては、精神論で引きとめようとする。これは、あまりにもウェット過ぎて、再び驚いた。

 8月の閣議決定では、国家公務員の早期退職を拡充していく方針も決められている。経費削減のためである。そして今回は、主として地方公務員であるが、早期退職を非難する。もちろん、これも経費削減のためである。一方で早期退職を勧告し、一方で引き留め策を取る。どちらも組織優先で、個々人のフォローはどこにもない。

 大臣や知事は、

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