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将棋電王戦の広がる波紋〜コンピュータは本当に人間に勝ったのか?

2013年第2回大会観戦記

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

プロ棋士5人がコンピュータ将棋の最強ソフト5つと戦った第2回電王戦(3月23日〜4月20日)は大きな話題となり、その波紋がまだ広がっている。

 何がそれほどの衝撃を呼び、今後はどうなるのか。「人間とコンピュータとの関係」に焦点を絞って、分析してみたい。

 

 電王戦は本欄でも北野宏明氏が再三採り上げていて、専門が近い氏の興奮ぶりが、抑制された文面からも伝わってくる。筆者も将棋ファンとして一喜一憂したひとりだ。

 

 将棋ソフトの進化は目覚ましい。はじめはアマチュア初段あたりと良い勝負だったのが、ここ数年はプロ相手にどこまで通用するかというレベルになった。2007年に渡辺明竜王に敗れたものの、2010年清水市代女流王将(当時)に勝ち、昨年の第1回電王戦では故米長邦雄永世棋聖に勝っている(すべて平手=ハンディなし)。今回の第2回では、コンピュータ将棋選手権の上位5位までのソフトがプロ棋士と戦い、3勝1敗1分の結果を残した。プロ側は若干18歳の阿部光瑠4段が緒戦で挙げた1勝だけだ。

 

 この企画の母体となった世界コンピュータ将棋選手権は今年で23回を数え、毎年40前後のソフトがしのぎを削っている。開発者たちの動機はロボカップ(ロボット同士のサッカー)と基本的には同じで、競技を通じて人間並みかそれ以上の能力を持つ人工知能(やロボット)を実現するヒントを得ることだ。

 

 今回の最大のニュースは何と言っても、マスコミと一般の関心の異常な高まりそれ自体だろう。ニコ二コ動画生放送での観客延べ動員数が2百万人超、コメント数は最終局だけで約74万件に達した。この膨大な関心の中身は何だったのか。一言で言えば

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