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データ大規模消失の恐怖

内村直之 科学ジャーナリスト

つくばの高エネルギー加速器研究機構(KEK)から、こんなプレスリリースがゴールデンウィークのまっ最中に出ていた。素粒子実験のデータの一部が、不手際から永久に失われてしまったというのである。

ノーベル賞は大丈夫か?

 Belle(ベル)実験といえば、ノーベル物理学賞を2008年に受けた小林・益川理論を、実験的に裏付けた「KEKの看板事業」である。実験は一段落して、次のSuperKEKBプロジェクトの本格稼働を来年に控えているとはいえ、税金で得た大事な実験データを失っていいのか、と思うと、気になるプレスリリースであった。何が起こり、どうしてそんな事態になったのか、報告されたことがらをじっくりと読んでみた。

 加速器による素粒子実験のようなビッグサイエンスでは、

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