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環境対策で国に先んじる東京都の意地と余裕 〈下〉

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 大野輝之・前東京都環境局長のインタビューを続ける。 

大野輝之・前東京都環境局長大野輝之・前東京都環境局長
 ――最近出された「自治体のエネルギー戦略」(岩波新書)の中では、「わが国には、業界の一部、霞が関の中央官僚やそのOBグループなどが形成する『エネルギー政策のアンシャンレジーム』というべき体制があり、彼らが既得権益を脅かすと思う新たなエネルギー政策に対しては、その実現を阻む壁を築きあげている」と書いていますね。

 大野 都の温室効果ガス総量削減義務制度に、最も強硬に反対し続けたのは、東京電力と日本経団連でした。2007年12月、都知事あてに提出された反対の意見書にも、経団連と電気事業連合会は名を連ねていた。意見書は、経済15団体の連名でしたが、環境局では経済界全体の見解を反映しているとはとらえていなかった。個々の企業、団体の実際の意見は、はるかに前向きであることを把握していました。

 業界団体に天下りした一部の中央官僚OBが、都が先駆けた制度を導入することに強く反対している構図も分かってきた。中には「都環境局による統制経済を招く」と主張する人までいました。

 ――排出量取引制度の批判のために、経団連が環境省、経済産業省とともに実施した欧州調査の報告書のウソも暴きましたね。

 大野 あの報告書は電力業界などが「排出量取引の実態はマネーゲームだ」と導入反対キャンペーンを張る最大の根拠となっていた。環境局では、報告書に出てくる英国の金融アドバイザーにインタビュー内容を確認するなど事実確認をしました。その結果、事実をゆがめたり、恣意的な主張をしたり、数々の細工をしていることが明らかになりました。これで、より建設的で具体的な議論に道を開くことになりました。

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