2013年07月31日
拝啓 山本太郎さま
参議院議員当選おめでとうございます。山本議員はかねてから「放射性廃棄物と食品の基準値は、1キロあたり100ベクレルで同等。それを子どもに食べさせているのが日本。その事態をマスコミは報道しない」と主張されており、当選直後のテレビインタビューでも同じ趣旨の発言をされました。言論の自由を最大限尊重するのが私どもの基本的立場ですが、放射能汚染に対し「日本の食品の基準値が甘い」という印象をふりまくご主張は事実と異なり、看過できません。事実と異なるこの発言によって、迷惑を被る生産者、不安を募らせる消費者がいます。これは深刻な問題であり、大変憂慮しております。マスコミが「放射性廃棄物と食品の基準値は同じ」という表現をしないのは、電力会社などスポンサーの圧力のせいではありません。その理由をこれからご説明します。
まず、放射性廃棄物の基準を確認しましょう。確かに、原子炉等規制法に基づく基準として「1キロあたり100ベクレル」という数値があります。これは原発を解体したときなどに出るコンクリートや金属の放射線量が「1キロあたり100ベクレル」以下ならそのまま再利用して構わない、という基準です。花崗岩には天然の放射性物質が比較的多く含まれますが、これは建築材料として盛んに利用されています。そうした自然材料との比較から、1キロあたり100ベクレル以下なら気にせずにリサイクルしてよいという基準になっています。
原発事故の直後には、「自然環境からも放射線は出ている」という説明があると「そんなことを持ち出して事故の影響を過小評価しようとしている」という反発がありました。あれだけの大事故の後にそうした気持ちになるのは理解できますが、すでに2年以上たったのです。事実関係を冷静に見て議論するのが、今や当然のマナーでしょう。自然の状態でも放射線が飛び交っているのは事実です。その量を測定してみると、数値は一定せず、わずかな場所の違いなどで相当大きく変わることがわかります。これが出発点です。
このことを理解できたとしても、「外で使うもの」と食品の基準値が同じだと聞いたら、誰しも憤慨したくなるでしょう。数値だけ見たら、「1キロあたり100ベクレル」というのは同じなのですから。でも、
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