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アンドロメダ星雲の美しい写真の意味

大栗博司

 すばる望遠鏡に新たに搭載された「ハイパー・シュプリーム・カム」と呼ばれるカメラが捉えたアンドロメダ星雲の姿が7月31日に公表され、テレビや新聞などでも大きく報道された。その美しさに目を見張った方も多いだろう。これまでのすばる望遠鏡で使われていたカメラの7倍の視野を持つ性能が実証されたのである。この高性能カメラは何のために設置されたのだろうか。大きな目的の一つは、「重力で宇宙を見る」ことである。

拡大すばる望遠鏡の新型カメラがとらえたアンドロメダ銀河。230万光年先にある巨大銀河が1枚の画像に収まった=HSCプロジェクト提供

 私が所属しているカリフォルニア工科大学は、マサチューセッツ工科大学と協力し、20年以上かけて「LIGO」と呼ばれる重力波望遠鏡を開発してきた。日本でも岐阜県神岡鉱山の地下に「KAGRA」と呼ばれる重力波望遠鏡が建設中である。アインシュタインの一般相対論によると、重力は時間や空間自身が伸び縮みすることで伝わっていく。そして、時空間の伸び縮みが波のように伝わっていくのが重力波である。これを直接とらえようというのがこの二つの望遠鏡だ。光と異なり、重力をさえぎることはできないので、光では見えなかった宇宙の姿が重力波で見えるようになると期待されている。

 人類は昔から 太陽や月、星からの光を見ることで、宇宙の姿を理解してきた。20世紀後半になるとガンマ線や赤外線などによる観測も可能になったが、これらはすべて電磁波なので、光の一種である。重力波の直接観測は、宇宙を見る新しい窓を開くことになる。

 こうした重力波天文台の本格的な運用は数年後であるが、別の手段を使って「重力で宇宙を見る」研究は既に始まっている。

 今年3月に、プランク衛星実験のグループが「宇宙の年齢は138億歳である」と発表した。私が学生のころには、 ・・・続きを読む
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筆者

大栗博司

大栗博司(おおぐり・ひろし) 理論物理学者、カリフォルニア工科大学教授

カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長およびフレッド・カブリ冠教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。アメリカ芸術科学アカデミー会員。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。著書に『重力とは何か』、『強い力と弱い力』(いずれも幻冬舎)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス)など。

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