メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

私たちの思考の基本を揺さぶる物理革命が起こりつつある

大栗博司 理論物理学者、カリフォルニア工科大学教授

 物理の革命は、しばしば「思考実験」から生まれる。実際に実験をするのではなく、頭の中で実験や観測を設定して、どのようなことが起きるのかを理論的に考えるのが「思考実験」だ。

 例えば1895年、当時16歳だったアインシュタインは、「もし光と同じ速度で走ったら、光はどのように見えるだろうか」と想像した。ニュートンの力学によると、光は止まって見えるはずである。ところが、電磁気に関するマクスウェルの理論によると、光の速さは観測者の走る速度によらないので、止まっては見えないはずである。アインシュタインは、「光と同じ速度で走る」という実験室で実現不可能な状況を考えて、ニュートンの力学とマクスウェルの電磁気学の矛盾を突いたのである。

 このように、物理学の理論は数学を使って精密に定式化されているので、論理を突き詰めて極限的な状況を考えることができる。そのときに、数学的な矛盾が見つかれば、それは理論に欠陥があるということであり、それを乗り越える理論が必要なことが明らかになる。アインシュタインは、思考実験によってニュートンの力学とマクスウェルの電磁気学の矛盾を発見し、それを解消するために特殊相対論を考え出した。

 また、 ・・・続きを読む
(残り:約2213文字/本文:約2722文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

大栗博司

大栗博司(おおぐり・ひろし) 理論物理学者、カリフォルニア工科大学教授

カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長およびフレッド・カブリ冠教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。アメリカ芸術科学アカデミー会員。1962年生まれ。京都大学理学部卒、東京大学理学博士。プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを歴任。著書に『重力とは何か』『強い力と弱い力』『数学の言葉で世界を見たら』(いずれも幻冬舎)、『大栗先生の超弦理論入門』(ブルーバックス)など。

大栗博司の新着記事

もっと見る