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ノーベル賞を超える賞

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 毎年この季節になると新聞社関係の知り合いから「今年のノーベル物理学賞は誰になりそうでしょうか?」という問い合わせが数件舞い込むのだが、予想が当たる可能性はほぼない(少なくとも私レベルでは)。そこで「もし天文学・宇宙物理学関係であれば」という但し書き付きで回答するようにしている。2011年9月30日の拙稿で天文学関係のノーベル物理学賞候補を3グループ予想したところ、見事その第2候補の受賞が同年10月4日に発表された 。しかしこれは単なる偶然と言うべきだ。大地震と同じく、受賞に値する業績の長期的な価値判断は可能でも、それがいつかといった短期的な予知は不可能なのだ。しかもこれで当面天文学分野の受賞はないだろう。実は今回もWEBRONZA担当者から問い合わせがあったが、丁重にお断りした(ちなみに、聞かれてもいないノーベル文学賞については、月並みではあるが村上春樹氏だと予想している)。しかしせっかくなので、ノーベル賞に代表される科学分野の賞の意義について考えてみたい。

 最近ノーベル賞をはるかに超えた巨額の賞金を出す賞がいくつか設立され話題となっている。天文学・物理学分野に関係したものだけでも、香港のメディア企業家 Run Run Shawが2004年から始めたショウ賞(天文学、生命科学、医学の受賞者に3分野それぞれ1億円)、ロシアのIT企業家Yuri Milnerが2012年に始めた基礎物理学賞(毎年9名にそれぞれ3億円)などがある。これらはある程度ノーベル賞とは相補的な性格を意図して受賞者が決まっているものの、すでに世界的な業績を成し遂げたことが認知されている著名な研究者が対象であることに変わりはない。

 むろん

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