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一点突破の小泉主義はどこまで通用する?

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 「原発は即ゼロがいい」という小泉純一郎元首相の日本記者クラブでの発言が、多くのマスコミで取り上げられている。「郵政民営化」を首相になる前から主張し続け、首相になると自民党内の反対意見を押し切って民営化法案を提出、それが参議院で否決されると衆議院を解散、「郵政選挙」に持ち込んで圧勝した小泉元首相。複雑なものごとを単一イシューに持ち込むのは、彼ならではの政治手法だ。その一徹ぶりに半ばあきれ、半ば感心しながら、私たちは首相時代の小泉劇場を見てきた。いや、有権者の一人として作り上げる一員となってきた。脱原発で、それが再現されるのだろうか?

大きな手ぶりをまじえて語る小泉純一郎元首相=12日、日本記者クラブ

 12日に開かれた会見に登場した小泉首相を見て、私自身が最初に感じたのは「老けたな」ということだった。71歳。年相応、いや、71歳としては若々しいといっていいのかもしれないが、現役政治家が持つギラギラ感は抜け、ご隠居さんの顔つきになっていた。

 小泉氏が再び注目されるようになったきっかけは、8月26日の毎日新聞朝刊に出た山田孝夫編集委員のコラム「風知草」だった。「脱原発、行って納得、見て確信−−。今月中旬、脱原発のドイツと原発推進のフィンランドを視察した小泉純一郎元首相(71)の感想はそれに尽きる」という書き出しで始まるこの記事は、三菱重工業、東芝、日立製作所の原発担当幹部とゼネコン幹部と一緒に小泉氏がフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を見学したことを伝え、「原発ゼロしかないよ」という彼のコメントを引き出していた。

 その後、各地の講演会などで「原発ゼロ」を訴える小泉氏を、日本記者クラブが招いて実現したのが12日の会見だった。

 なぜ、原発ゼロを主張するのか? 理由は一つだった。

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