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自然への感謝を育む 蜜ロウソクの世界

米山正寛 ナチュラリスト


蜜ロウソクの明かり(安藤竜二さん提供)
 年末を迎えて、街や家庭にロウソクの明かりが映える季節がめぐってきた。さまざまなロウソクがあふれる中で、皆さんは蜜ロウソクをご存じだろうか。ミツバチが巣材として分泌する蜜蝋(みつろう)を原料としたロウソクである。一般に使われているロウソクは、カラフルなものも含めてほとんどが石油系のパラフィンで作られている。他に自然素材を使うロウソクとしては、ハゼノキなどの果実から採れる木蝋(もくろう)でできたものが知られるくらいだ。

 蜜ロウソクの歴史は、紀元前までさかのぼる。ミツバチの巣に火をつけるとよく燃える。太古のエジプトなどで、それを見た人々が、芯を埋めて利用することを思いついたのだろうか。日本へは奈良時代、仏教に伴って持ち込まれたらしい。ところが遣唐使の制度がなくなると渡来が途絶えてしまい、現代に至るまで注目されることはほとんどなかった。蜜ロウソクの放つ明かりの魅力に取りつかれ、国内でただ一人、生業として製造に取り組んでいるのが、山形県朝日町に暮らす安藤竜二さん(49)である。

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