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幼少期の教育で一番大切なもの

秋山仁 数学者、東京理科大特任副学長

 今年は、交際を断られたことを理由に相手を殺してしまうという悲惨なストーカー事件がクローズアップされた一年だった。「犯人の心境が全く理解できない」と人々は口々に言ったが、加害者の多くは学校や職場でさほど問題視されることもなく社会生活を送る一見普通の人だった。一番大切であるはずの人に、「自分の愛に応えろ」と強要し、それに従わないと死に値する罪だと言わんばかりの行動を起こす。筆者には、ストーカー事件を引き起こす人は、虐待やいじめの加害者と同様に幼少期からの根深い問題「愛着障害」を抱えているように思えてならない。

愛着障害とは

 『愛着障害』(岡田尊司著-光文社新書)には、次のようなことが書かれている。かつてある時期、イスラエルで各家庭が子供の面倒をみるのは無駄が多いし、そうしない方が自立した子供に育つと考えられたことがあった。そこで、日夜完全に家庭から切り離した効率的な乳幼少年期の子育てが大々的に行われた。数十年たって、そうやって育った子どもは対人関係が不安定になり易い、何事にも無気力な傾向が見られるなどの重大な欠陥が生じやすいことが判明したそうだ。なお、夜間だけでも家庭に戻されていた子どもには、その傾向が薄かったという。

 この事例や戦災孤児の分析から得られた教訓は以下のことだ。

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