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「温暖化防止に原発は必要」という主張の是非(下)

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 「深刻化する温暖化による脅威を回避するためには、原発の利用が不可欠だ」というコロンビア大のジェームズ・ハンセン博士らの書簡に対する反論を見てみよう。昨年、環境団体の代表ら200人以上が連名で出した反論の要点は次のようなものだ。

 「原子力は経済的に現実的な選択ではなく、『進んだ原発』はまだ計画途上で、金の浪費にしかなっていない。再処理も経済的にも環境的にも有害だ。再生可能エネルギーは急激に拡大、コストダウンしており、温暖化防止のためには、原子力よりはるかに現実的だ」

 ここでは、1月にまとめられた明日香寿川・東北大学教授、朴勝俊・関西学院大准教授、諸富徹・京都大学教授ら4人の反論を詳しく紹介したい。温暖化の危険水域とされる18世紀半ばの産業革命以降の世界の平均気温の上昇限度である2度の達成は、「原発がなくても可能」と結論づけている。最近になって署名も始めた。

  以下が要約である。

【原子力発電は気候変動問題への答えではない】(原文)(英訳

 これまでの温暖化問題に対する極めて真摯な取り組みを賞賛します。

 しかし、博士たちの書簡は、原発のリスクを過小評価すると同時に、燃料転換、再生可能エネルギー、省エネなどの役割を過小評価しています。日本の環境保護主義者の間には、温暖化防止が原子力産業の陰謀とする懐疑論が、博士たちの想像以上に根付いています。書簡は、そのような懐疑論者の疑念を強め、逆効果となると懸念されます。
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