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「核」とはどのような存在なのか~万能細胞におけるリプログラミングに関する省察~(下)

武村政春 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

DNAが核膜に包まれたことにより、次のことが可能となったと考えられる。

(1)全体の秩序を保ちながら、DNAを長くすることができた。
(2)細胞分裂とDNA複製という2大イベントを核膜によって隔てることで、DNAの正確な次世代への継承を可能にした。
(3)スプライシングと翻訳を核膜で隔てることにより、混乱することなく両者がそれぞれのスピードで反応することができるようになり、遺伝子の多様化がもたらされた。
(4)DNAの長さの増大により、遺伝子の数も増え、多細胞化という複雑な現象を可能にした。
(5)様々な細胞に分化してもDNA(の塩基配列)は常に一定であるよう保持することができた。

 つまり、遺伝子の保管庫であり、発現の場である核。これが、細胞のはたらきの中心的な場である細胞質とは「別の場所」として隔離されることは、多細胞生物の進化にとって必要不可欠なことだったのだ。

 このうち、本稿において重要な視点は(5)である。様々な細胞に分化、つまり専門化しても、DNAという“設計図”はきちんと保管されているという視点。もっとも、もし核のない「原核細胞」が専門化し、多細胞生物を作れたとしても、そのDNAが“設計図”としてきちんと保管されないという保証はないが。 ・・・続きを読む
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筆者

武村政春

武村政春(たけむら・まさはる) 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

東京理科大学大学院科学教育研究科准教授。1969年三重県生まれ。1998年名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。名古屋大、三重大の助手等を経て現職。専門は生物教育学、分子生物学、細胞進化学。著書に「レプリカ~文化と進化の複製博物館」(工作舎)など多数。【2015年10月WEBRONZA退任】

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