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「大盤振る舞い」研究費が残したもの-FIRSTとNEXT

高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター

拡大東京・新宿で開かれた「FIRSTエクスポ2014」のポスター展示会場
 2009年に当時の麻生太郎首相が「トップ研究者30人に3000億円の研究費」という「経済危機対策」を打ち出したのを覚えておられるだろうか。この構想から生まれたのが、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)と最先端・次世代研究開発支援プログラム(NEXT)だ。FIRSTでは30人に平均33億円が、NEXTでは若手と女性研究者329人に2000万円~1億8000万円が配分された。このプログラムが今年3月で終了する。「大盤振る舞い」は何を残したのか。

 2月28日、3月1日の両日、東京・新宿で二つのプログラムの成果を報告する大規模なイベントが催された。研究成果発表、パネル討論、ポスター展示、ワークショップにフォーラムと盛りだくさんの内容で、2日間で延べ1400人が参加した。

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 若手研究者からは「こうしてお互いが交流する機会が実施期間中にもあれば良かった」という声が聞かれた。自分の研究に専念するように求められたために、研究チーム以外の人たちとの交流が乏しい日々を過ごした人が少なくないようだった。大学の中には、大型研究費を得た若手を支援しようとせず、ある種の「いじわる」をしたところもあったことが、FIRSTシンポジウム事務局が実施したNEXT研究者アンケート結果から浮かび上がる。各都道府県で最低1人は選ぶという方針だったために、中には周囲からねたまれてしまった人もいたのかもしれない。もっとも、このアンケートでは8割以上が制度として「よかった」と答えており、大半の研究者は自由に使える多額の研究資金を活用できたことが伺える。

 2009年は、自民党から民主党への政権交代が起きた年である。5月、当初構想の3000億円から1割減って2700億円の「研究基金の新設」が盛り込まれた補正予算が成立した。トップ研究者30人に平均90億円ずつ配るという、それまでにない巨額、かつ個人の研究者の裁量を大幅に認めた野心的なプログラムだった。「基金」とは予算の単年度主義にとらわれず、お金をプールして使えることを意味する。

 しかし、真夏の総選挙で自民党が大敗北し、政権交代が起きた。民主党政権は予算をそのまま認めず、総額を1500億円に縮小、さらに、うち500億円は若手と女性研究者を支援するプログラムに使うように変えた。こうして、「満45歳以下、女性は年齢制限なし」で1課題あたり5000万円×年度数、上限2億円まで出すNEXTが誕生した。一方、FIRST研究者への研究費は平均90億円から平均33億円に減った。

 それでも、個人の研究者に配分される金額としては破格の多さである。しかも、 ・・・続きを読む
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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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