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捏造論文史から占うSTAP事件の今後

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

 STAP細胞事件は、理化学研究所(理研)と小保方晴子ユニットリーダーの全面対決という思いがけない方向に進みつつある。科学論文に対する疑惑解明がマスコミ注視の中で進行するのはきわめて異例のことだ。しかし、論文捏造という事件自体はこれまで世界中で何度も起きている。過去の例をひもといて、STAP事件の今後を占ってみたい。

 今回の件で多くの人が驚くポイントをあげてみよう。「理研という世界トップクラスの研究所で」「若い女性研究者がノーベル賞級の成果を挙げたと思ったら暗転」「共著者は世界的に認められた研究者なのに」の三つにまとめられると思う。

 今の日本社会で、女性ということで話題が大きくなってしまったのは紛れもない事実だ。ただ、その部分をそぎ落として考えてみれば、「トップクラス研究機関」「若い研究者の暗転」「リーダーは研究仲間から尊敬されている研究者」という3要素は多くの捏造事件に共通する。トップクラス研究機関でなければ研究不正が起きても世間に知られない、という事情もあるだろうが、そもそも最先端の研究現場でこそ不正は起こりやすいのだ。

米国のコーネル大学(同大ホームページから)

 米国で1980年代初めに起きた「スペクター事件」も、ぴったりこれに当てはまる。場所はコーネル大学という米国有数の研究大学(日本で言えば、京都大学のようなところ)で、20代の大学院生のマーク・スペクターと、1976年にアメリカ科学賞を受賞したがん研究の大御所エフレイン・ラッカー教授が登場人物だ。

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