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STAP細胞論文問題の「黒幕」は何か(上) ~「不正」と「欲求」のはざまで~

武村政春 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

 東京の桜が満開となり、消費税が8%に増税された4月1日。STAP細胞論文問題に関する理化学研究所の最終報告会が開かれ、私はニコニコ生放送で記者会見を見た。

 おびただしい数の報道陣が会場からあふれんばかりである。はたしてこの中に、純粋な科学的真実に興味を持っている人間がどれだけいるのだろうか。1月末、あのような大々的な記者発表をしなければこんな大騒動にはならなかったろうにと思いながら、私はPCの前に座っていたが、この会見を見ているうちに何だか非常にやるせない気持ちになってきた。

 記者会見を行っている科学者と記者との間のやり取りに、科学者と科学者以外との間に、越えるべき考え方の大きな壁が存在することを、改めて思い知らされたからである。

 調査委員会の石井委員長や理研CDBの竹市センター長は、さすがに第一線の科学者らしい的確な表現で質疑応答にも臨んでおられたが、彼らは別に、のらりくらりと言い逃れをしていたわけではない。科学的な見地にたって、言えることと言えないことをきちんと分けて話をしているのである。あれこそまさに科学者の態度であったと、科学者コミュニティーの一員でもある私には思えた。

 2日付けの朝日新聞朝刊一面の《解説》の中に、「論文の不正とは別に、STAP細胞が存在することはまだ信じたいという意向がにじむ。」とあるが、そうではないと思う。理研とは利害関係の全くない私だが、たとえ私が記者会見したとしても、石井、竹市両氏のような回答をしただろう。STAP細胞が存在することは「まだ信じたい」のではなく、ほんとうに「わからない」からである。

 しかしながら、

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