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温暖化交渉で存在感のない日本 国連気候サミット

石井徹 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

 国連気候サミットが23日、米ニューヨークで各国首脳が参加して開かれた。安倍晋三首相は演説で、日本政府が今後3年間で、発展途上国で地球温暖化対策を担う人材を1万4千人育てる支援策などを表明した。詳しい中身は分からないが、いかにも苦しい。2020年以降の温室効果ガスの削減目標はないにしても、EU(欧州連合)や米国は方向性を示している。日本は自らの削減には一言も触れていない。

安倍首相拡大 国連気候サミットで演説する安倍晋三首相=23日、米国・ニューヨーク、越田省吾撮影
 安倍首相は、1途上国支援、2技術革新と普及、3国際枠組みへの貢献、の三つを日本の行動のカギとして挙げた。途上国支援では、人材育成のほか「適応イニシアチブ」を立ち上げる。技術革新と普及では来月、産官学による国際フォーラムを開く。国際枠組みでは、できるだけ早く約束草案を提出することを目指すという。地球温暖化防止の国際交渉における現在の日本の立ち位置を反映したような内容だ。

 原発の扱いや電源構成の議論が進んでいないため、日本が削減目標に触れられないのは織り込み済みだった。霞が関周辺では「原発比率を示すと住民の反発が予想されるので、政府は来春の統一地方選の前には電源構成を示さない」(外務省幹部)とも言われている。そうなると、「原発比率が決まらないと削減目標をつくれない」(環境省幹部)ので、来年5月以降になる。だが、EUや米国に加え中国も来年3月までに削減目標を事務局に提出すると見られる中で、日本の取り組みはいかにも遅い。

 気候変動問題で、潘基文事務総長が各国首脳を集めて会合を開くのは、3回目だ。1回目は2007年9月、先進国に削減義務を課した京都議定書の第1約束期間(2008~12年)のスタートが間近に迫る中、13年以降の枠組み「ポスト京都」をめぐる協議が始まらず、国際社会がやきもきしていた時だ。

 潘事務総長は、各国首脳たちに、年末にインドネシアのバリで予定されていた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、本格的な交渉に入るよう促した。70人以上の首脳が参加し、温暖化防止への決意を述べた。この時はニューヨークで取材した。ブッシュ政権の終盤で、それまで温暖化対策に後ろ向きだった米国に変化が起きている、と感じたのを覚えている。いま思えば、いささか楽観的だったとは思うが……。

 日本は、前回の政権に就いていた安倍首相が辞任したばかりで、森喜朗元首相が首相特使として演説した。森元首相が強調したのは「50年に温室効果ガス半減」や「大幅な排出削減には、革新的な技術開発が不可欠。国際的な協働を通して技術の広い普及を進める」だった。今回の安倍首相の演説は、ここから何か進展したのだろうか。

 この会合が契機になったのか、年末のCOP13では、2年後のCOP15までに米国や中国を含む新たな枠組みをつくるとする「バリ行動計画」に合意するなど、一定の成果を挙げた。

 2回目は、COP15直前の09年9月のことだ。潘事務総長には、COP15での「ポスト京都」の合意を達成するために弾みをつけたいというねらいがあった。中国の胡錦濤国家主席も出席するなど、国際的な盛り上がりがあった。

 日本は民主党政権が誕生したばかりで、鳩山由起夫首相が、「1990年比で25%」という20年の日本の温室効果ガス削減目標を国際的に公約し、90カ国以上の首脳から称賛の拍手を浴びた。国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の導入、地球温暖化対策税についても検討の意向を示すなど、温暖化対策への前向き感が満載だった。振り返れば、あの時が民主党政権のピークだったとも言える。

 だが、その後は残念な経過をたどる。12月にデンマークで開かれたCOP15は、本来は環境大臣の交渉の場であるにもかかわらず、米国のオバマ大統領をはじめ各国の首脳が乗り込み、ひざ詰めで談判した。にもかかわらず、新たな国際枠組みの合意はかなわなかった。新たな枠組みは先延ばしされ、来年12月にパリで予定されているCOP21での合意が期待されている。

 日本では11年3月の東日本大震災以降、「温暖化どころでない」という空気が広がり、原発の停止により火力発電の稼働率が増え、二酸化炭素(CO2)の排出はむしろ増える傾向にある。12年末、自民党が政権に返り咲くと、日本は25%削減に替えて05年比3.8%減(90年比3.1%増)という目標を、新たに条約事務局に提出した。運転時にCO2をほとんど排出しない原発こそ温暖化防止の切り札という原発事故前の主張も、息を吹き返してきた。

 そして、今回の気候サミットである。日本はこれまで温暖化防止の会合で、緩和と呼ばれる削減策で目覚ましいタマがない時には、途上国支援の資金援助を表明することが多かった。額を大きく見せるため、すでに支出しているODAなどの焼き直しを含んでいることが多いが、今回は具体的な金額もなかった。日本の経済力が相対的に低下する中で、資金援助の面でも存在感を示すのは難しくなっているのをうかがわせる。 ・・・続きを読む
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筆者

石井徹

石井徹(いしい・とおる) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー)

朝日新聞編集委員。東京都出身。1985年朝日新聞入社、盛岡支局員、社会部員、千葉総局次長、青森総局長などを務めた。97年の地球温暖化防止京都会議(COP3)以降、国内外の環境問題やエネルギー問題を中心に取材・執筆活動を続けている。共著に「地球異変」「地球よ 環境元年宣言」「エコウオーズ」など。

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