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「すべてのクルマを電気自動車にする」イーロン・マスクの野望

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

 電気自動車(EV)のパラダイムシフトは、中国の山東省からやってくると思っていた。そこで、農用車に電池とモーターをつけただけの安価なEVが普及しはじめていたからだ(WEBRONZA 2012年4月27日)。そのEVは、1回の充電で50~100kmしか走れず、最高速度も50km程度しか出ないことから、低速EVと呼ばれた。

 日本の自動車メーカーも、この流れは抜かりなくフォローしていた。トヨタ、日産自動車、ホンダなど多くの自動車メーカーが、短距離移動用の超小型EVを開発し、公道でのテスト走行も行っていた。

 しかし、EVは思った程、普及する気配がない。2013年に生産された四輪自動車は約8725万台だが、そのうち、EVはたったの12万台(0.13%)に過ぎなかった。

 航続距離が短く、ガソリン車に比べてコストパフォーマンスが悪いEVは、やはりエコカーの主流にはならないのか。そう思い始めた矢先、米テスラ・モーターズのCEOであるイーロン・マスクの特集記事を読み、度肝を抜かれ、大きく考えが変わった(日経ビジネス、2014年9月29日)。EV化の波は、米国からやってくる!

拡大米テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO) =2013年1月、畑中徹撮影

 マスクは、何と「すべてのクルマをEVにする」ことを目指している。そして、自動車業界の動向とは全く逆のアプローチで、航続距離の長い高級車の開発からスタートしている。

 テスラ・モーターズは、2008年に、1276~1481万円の超高級車「ロードスター」を発売した。1回の充電による航続距離は394km、時速0kmから97kmまで加速する時間は僅か3.7~3.9秒。このポルシェ並みの加速性能が評判となって、ハリウッドスターたちが買い求めたという。

 2012年には、823~1081万円の高級セダンの「モデルS」を発売した。航続距離は390~502km、時速0kmから100kmまで加速する時間は4.4~6.2秒。モデルSは、クールな高級車として富裕層の人気の的となった。

 そして、2017年ごろには、375万円程度の大衆車「モデル3」の発売を計画している。その際、モデルSと比べて、航続距離も加速性能も落とさないと明言している。もし、これが実現したら、自動車業界に衝撃が走るのではないか。

 その実現の鍵は、リチウムイオン電池のコストダウンにある。このためにマスクは、 ・・・続きを読む
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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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