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数学教育にも変革が必要だ

急ピッチで進む英語教育改革に数学も続こう

秋山仁 数学者、東京理科大特任副学長

急ピッチで変革が進む英語教育

 2011年から小学校5,6年生で「外国語活動」が取り入れられたのに続き、これを小学校3年生からに前倒しする方向で文部科学省中央教育審議会の議論がスタートした。

 「日本人は6~8年間も英語を学んでいるのに、多くの人が簡単な英語すら使えていない」という指摘は、数十年も前から続いている。その原因は、「文法を主体に、訳読を中心にしたカリキュラムや試験対策を目的とした英語の学習にある」ということも久しく言われ続けてきた。

 文法を中心に据えた元来のカリキュラムは、カッチリした英文や洋書、論文を読めるようになるためには、効率的で優れたものだった。だから、高校や大学の進学率が低く、また、外交官やビジネスマン、研究者等のように、将来、英語を使う必要のある人がごく少数に限られていた時代は、そのカリキュラムでほぼ事足りていた。

 しかし、グローバルなIT社会の時代が到来すると、仕事や生活上の様々な場面で英語を使う必要に迫られる人が大幅に増え、明治時代以降、堅持されてきた元来の英語教育を変える必然に迫られた。それが、現在、急ピッチに進められている変革につながっている。

 英語に対する新規でかつ多くの需要は、英語を道具として使いたいというものである。従来の英語教育に尽力してきた専門家からすると、この需要に合わせた教育は軟弱で受け入れ難いことかもしれない。しかし、学校教育に学問のための英語カリキュラムを課して、その結果社会人となったときに多くの人が英語を全く使えないのではあまり意義はない。それより各学生の必要度に応じ、また難易度を分けて「読む、書く、聞く、話す」の4つの技能を伸ばすような多様なカリキュラムを提供した方が、結果的に、多くの人のためになる教育といえるはずだ。

岐阜県高山市中切町の市立三枝小の算数の授業

数学と英語の共通性と相違点

 数学教育に関しても、英語教育と同様に、随分昔に原型が作られたカリキュラムが使われている。それは、少数の自己学習能力や学習意欲の高い者が理工系の大学で微積分と代数学を学ぶことを最終目標に据えたものである。そこに辿り着くまでの知識(概念や定理・公式)を階層的に学んでいくという単一のカリキュラムのもとで、図形の合同や相似、三平方の定理、文字式や方程式、三角法、ベクトルなどが教えられてきた。進学率が低いときは、この単一カリキュラムを根幹とする方式でもよかったかもしれないが、進学率が上がり、かつ、ITや高性能なコンピューターソフトが普及した現在、時代との齟齬があると感じざるを得ないのは、英語教育の状況と同じだ。

 しかし、英語と数学には大きな違いがある。英語に関しては、

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