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スマホ戦国史の次の覇者は中国シャオミか?

APを制するものがスマホを制する

湯之上隆 コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

スティーブ・ジョブズの慧眼

 2014年に出荷台数が12億台を超えるスマホの最も重要な部品は、すべての機能の中心となる半導体集積回路アプリケーションプロセッサ(AP)である。したがって、「APを制するものがスマホを制する」と言っても過言ではない。

 このことに最も早く気づいたのはアップルのスティーブ・ジョブズである。しかし、当初アップルにプロセッサを設計する能力はなかった。そこでアップルは、軍事や航空宇宙用の“とんがった”プロセッサを開発していた半導体設計専門会社P.A.Semiを2億7800万ドルで買収した。

 P.A.Semiの中心人物は創業者の1人、ダン・ドバーパルという設計者で、彼のチームが、「iPhone 4S」のプロセッサ「A5」を開発した。そしてこれがアップルの躍進に一役買ったわけである(ダン・ドバーパルはその後、グーグルに引き抜かれた)。

インテルの失策と漁夫の利を得たサムスン電子

 スマホのAPの設計と同様に製造も重要である。しかし、アップルは半導体の量産工場を持っていない。そこでアップルは、初代iPhone 用 APの製造をインテルに打診した。ところがインテルは、「1個10ドルではビジネスにならない」と断ってしまう。これは、「インテル史上最大のミスジャッジ」と言われ、当時CEOだったポール・オッテリーニは2013年に引責辞任を余儀なくさせられた。

 インテルに断られたiPhone用APは、サムスン電子が受託製造(すなわちファンドリー)を行うことになった。このiPhone効果により、ファンドリー部門におけるサムスン電子のランキングは、3年間で10位から3位に大躍進した(WEBRONZA2013年5月29日)。

 さらに、iPhone用APの受託製造はもっと大きな効果をもたらした。サムスン電子は、自他ともに認める「ファーストフォロワー(最初の模倣者)」である。その模倣者に、アップル社は、スマホの付加価値の源泉のAPを製造委託したわけである。

 サムスン電子のスマホ・GALAXYは出荷台数でiPhoneを抜いて世界一となり、GALAXY がサムスン電子の営業利益の約7割を稼ぎ出すまでになった。このGALAXYの開発・製造に、iPhone用AP受託製造で知り得たノウハウが活かされていることは間違いない。

 アップルとサムスン電子は、2012年から世界各国で、スマホに関する訴訟合戦を繰り広げている。これについてアップルは、墓穴を掘ったとしか言いようがない。アップルは、 ・・・続きを読む
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筆者

湯之上隆

湯之上隆(ゆのがみ・たかし) コンサルタント(技術経営)、元半導体技術者

1987年京大修士卒、工学博士。日立などで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、各種雑誌への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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