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ここがおかしい、北電の再生エネ導入可能量

原発最大復帰を前提とした再生可能エネルギー制度の見直し

吉田文和 愛知学院大学経済学部教授(環境経済学)

 「再生エネルギーの「受け入れ凍結」と原発再稼働を考える」(webronza2014年10月16日)で指摘した事態は、資源エネルギー庁が、「再生可能エネルギーの最大限導入に向けた固定価格買取制度の運用見直し等について」を公表する展開となった(12月18日)。しかし、そのタイトルとは裏腹に、再生可能エネルギーの最大限導入ではなく、原子力発電の福島事故以前の稼働率への最大復帰が算定の前提条件となっており、太陽光発電を中心とした出力抑制と固定価格買取制度の見直しが中心である。

 その点を具体的に北海道電力の公表した「太陽光発電の接続可能量算定結果について」(平成26年12月16日)について詳しく見てみよう。この算定結果は太陽光発電の接続可能量を117万kWと算定した根拠を示したものであるが、その前提条件の設定に基本的な問題がある。

北海道電力の泊原発、3基で出力は計207万キロワット北海道電力の泊原発、3基で出力は計207万キロワット
 (1)そもそも再生可能エネルギーの利用拡大の大きな転換点となった東電福島第1原発の事故を踏まえた前提条件の設定が必要であるのに対して、本算定は、福島原発の事故がまるでなかったような前提が置かれており、昨年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」にある原発依存度を可能な限り低減させるという方針にも反する。

 以下のような<ステップ3> 一般水力・原子力・地熱出力の想定1の前提条件は、原子力を準国産エネルギーとして、震災前の設備利用率(84.8%)を用いて、出力想定を175.5万kWとするところが最大の問題点である。いまだに再稼働できず、その目途もたっていない泊原発の3基をベース電源とするという算定にそもそもの基本的な問題がある。

 この点は、九州電力や東北電力の算定などにおいても同じ問題点があるので、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会及び同小委員会系統ワーキンググループの検討方法の在り方が問われてくる。

 北電算定書は算定の前提条件について次のように述べている。 

 「◇一般水力、原子力、地熱は、国産又は準国産エネルギーであり、また、柔軟な出力調整には技術的制約があることから、可能な限り運転することとする。
◇当社管内の各電源の特性や長期的な傾向を反映することとし、当社における震災前30年(30年経過していない場合は運転開始後の全期間)の設備利用率平均を用い、設備容量を乗じる(設備利用率×設備容量)こととする。
◇ただし、一般水力のうち、貯水池式・調整池式水力については、多少の出力調整が可能であり、再生可能エネルギーの発電状況に応じた運用をする前提により算定を行う。
(第1回および第2回系統ワーキンググループ資料に基づく)」

 この根拠となった、2014年10月16日第1回系統ワーキンググループ資料は以下のように提案していたのであり、その通りの算定方法が採用されたことになる。

 「STEP3 検討断面における出力の想定(一般水力・原子力・地熱)
 太陽光発電や風力発電は、時間や天候により出力が変動する特性があり、コストが安く昼夜問わず安定的に発電できる、いわゆる「ベースロード電源」とは役割が異なる。安定供給のためには、こうしたベースロード電源を一定量確保することが必要。我が国では、一般水力、原子力、地熱、石炭火力がベースロード電源に該当。
 このうち、一般水力、原子力、地熱は、国産又は準国産エネルギーであり、また、柔軟な出力調整には技術的制約があることから、可能な限り運転することとする。
 これら一般水力、原子力、地熱の出力については、各電力会社の特性や長期的な傾向を反映することとし、電力会社別の震災前過去30年(30年経過していない場合は運転開始後の全期間)の設備利用率平均を用い、設備容量を乗じる(設備利用率×設備容量)こととしてはどうか。」

 (2)さらに出力抑制の必要性の根拠として、最小需要発生日の5月晴天日の日曜日を想定して、電力需要が最小になり、かつ太陽光発電の供給が最大になるという極端なケースで算定し、出力抑制を合理化しようとしている。

 (3)再生可能エネルギーによる発電の出力抑制を最小限に止める方法は、送電線による需要地への送電や揚水発電などの方法があるにもかかわらず、地域間連系線として、北本連系線60万kWのうちわずか5万kWを使うのみであり、かつ揚水発電も太陽光発電が最大になる昼間には利用できないという想定である。

 (4)また、風力の接続可能量を56万kWとしている点についても根拠が不十分

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