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数万機のドローンが飛び交う社会はすぐそこに

東京五輪のときにお台場を特区にして社会実験をすべきだ

北野宏明 ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

 元旦のWEBRONZAでの論考で、日本には、まだドローン(小型無人飛行体)分野でのプレーヤーが出現していないと書いた。もちろん大学や企業で、ドローンを開発していることころは多いので、何も行われていないわけではない。しかし、ほとんどのドローンは輸入製品であり、ドローンを使ったサービスやインフラ構築への構想も大きなものは聞かない。

昨年発売された家庭用ドローン「ローリング・スパイダー」(左)と高速走行ロボット「ジャンピング・スーモ」=戸田拓撮影

 私は、ドローンは、紆余曲折はあるものの、新たなインフラとなる可能性を秘めていると考えており、この分野の出遅れに大きな危惧を抱いている(ここでの「ドローン」は小型マルチコプターを想定し、米軍が使っているGeneral Atomic MQ-9 Raptorなどに代表される軍事用ドローンの話はしない)。

急拡大するドローン市場

 ドローンの分野での主要な会社には、深圳に本社を置くDJI社やパリに本社があるPARROT社などがある。DJIは2000名、PARROT社は850名という規模の会社で、後者はEuroNext Paris (Compartment B / Mid Caps)に上場している。

 同社の2014Q3資料を見ると、第三四半期での売り上げが2770万 Euro (およそ39億円)に達しており、そのほとんどが一般流通経路で市販するドローンである。ドローン売り上げは前年度比で130%伸びている。注目すべきは、同社が米国の新興企業でセンサーとビックデータに特化したMicaSense社にマイノリティー資本参加していることである。こうした戦略が、日本の企業には見られないのである。

 遠隔操作が可能な小型飛行体としては、日本ではヤマハの無人ヘリがよく知られている。農業用を中心に普及しているが、価格が1000万円を超えるもので、販売数は数百機のオーダーである。これに対しドローンは、マルチローター化と精密な姿勢制御を搭載し操縦が格段に容易となり、価格も個人で購入可能なレベルにまで下がり、格段に応用可能性が広がっているのである。実際、米国では、安価なホビー用のドローンは、空港の土産店などでも普通に売られている。

エンターテインメントや空撮ですでに大活躍

 ドローンの主要な用途は、今のところエンターテインメント(CMやショー)、空撮、インフラ点検、農業などである。特に、CMでは、LEXUSのCMが、有名であり美しい。

 ショーでは、昨年の大晦日のNHK紅白歌合戦のPERFUMEのステージでドローンが照明を吊り下げて飛び交ったのを見た人も多いであろう。この時に使われたドローンは、独自開発されたものという話である。

 空撮に関しては、もはや定番の機材となりつつあり、本当に多く使われている。報道分野では、イスタンブールでのデモをドローンから空撮した映像が注目を集めた。最近では、香港でのデモを空撮した映像が記憶に残る。さらに、Amazon.comが、配達に利用を検討するなど、新しい用途開発も加速するであろう。

 また、オランダのデルフト大学は、AmbulanceDroneという構想を発表している。これは、ドローンがAEDを装備し、緊急時にその場所に飛んでいくというものである。アラブ首長国連邦は、2月にUAE Drones for good Awardというドローンの応用のアイデア競技会を開催する。この優勝賞金は、100万ドルである!

 同時に、より高度な制御に関する研究も進んでいる。スイス連邦工科大学(ETH Zurich)のRaff D’Andrea教授のチームは、複数ドローンの連動制御の研究で最先端を走っている(TEDでの講演はこちら)。その研究のインパクトは、一連の映像から明らかである。

安全性など課題は山積

 一方で、

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