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鳥学と歩んだ画家 小林重三

綿密な形態観察と卓越した技法で学者の信頼を得た博物画の鬼才に光を当てる

米山正寛 ナチュラリスト

 動植物の図鑑と言えば、今はカラー写真をふんだんに使ったものが全盛で、書店やネット上にあふれている。でも少し前までの図鑑は絵が中心であり、特徴を細かく捉えて、学術的な価値を備えた絵を描く博物画家が重用された時代があった。

『日本鳥類大図鑑』11図原画、1938-41年頃(個人蔵)。ツバメ、カワセミなどが描かれている=町田市立博物館提供『日本鳥類大図鑑』11図原画。1938-41年頃(個人蔵)。ツバメ、カワセミなどが描かれている=写真はすべて町田市立博物館提供
 大正から昭和にかけて鳥の絵を中心に描き続けた博物画家、小林重三(こばやし・しげかず、1887~1975)の作品を集めた展示会「博物画の鬼才 小林重三の世界」が東京都町田市の市立博物館で開かれている(3月1日まで、月曜休館)。88年の生涯のうち、60年以上を鳥を描くことに費やしたこの人の作品群を見ると、「鳥学と歩んだ画家」という形容にも納得がいく。戦前から戦後にかけて発行され、日本を代表する学者が編んだ「鳥類三大図鑑」と呼ばれる図鑑がある。『鳥類原色大図説』(黒田長禮/1933、34)、『日本の鳥類と其の生態』(山階芳麿/1934、41)、『日本鳥類大図鑑』(清棲幸保/1952)の三つを指す。これら全てに関わり、挿絵の大半を描いたというから、学者たちが厚い信頼を持って、その画才を認めていたことが分かる。この画家がいなければ、日本の鳥学の普及・発展はもっと遅れていたのではないかと思えてくる。
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