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[4]昆虫が嫌いでも生物学者になれる

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

トークショー「数学と理科の楽しみ方」(数学者秋山仁氏×生物学者武村政春氏×朝日新聞編集委員高橋真理子,2015年1月28日,東京理科大学数学体験館にて)の採録を続ける。

数学体験館には、数学を体験できるさまざまなおもちゃが展示してある。中央にあるのは楕円の性質を体感できる「楕円ビリヤード」
武村 僕ははっきり言って昆虫が嫌いなんです。生物学者って皆さん昆虫、好きじゃないですか。養老孟司さんとか、福岡伸一さんだってそうですよね。池田清彦さんとか、みんな昆虫が好きで、昆虫が好きじゃないと生物学者になるなみたいな、そういう風潮があるんじゃないかと思って。

高橋 あります。

武村 私なんかは子供のころからカブトムシとかも捕ったことがなくて、イモムシも触るのも嫌だという人間なものですから。そういう人間がなぜ生物学者をやっているかというと、今、分子生物学というのは試験管の中の液体を扱っているようなものです。生物個体を生で見ることはない。だから生物が嫌いでも生物学をやれる。これをアピールしたい。

 例えば実験をたくさんやらせなければいけないとか、実験がやられなくなったから理科離れが進んでいるという議論がありますね。僕自身は子どものころはあまり実験は好きじゃない方で、高校時代も実験をしたという記憶があまりないんですね。もちろん僕は生物部に入っていたもので、その意味では生物好きだったんではあるんですけれども……

高橋 どうしてなんですか? 昆虫が嫌いで生物部に入るって・・・

武村 その生物部は昆虫を使ってなかったからですね。

高橋 何をやっていたんですか?

武村 何をやっていたか忘れましたね。忘れたぐらい、ほとんど何もしなかったんですけど。それでもやはり理科の魅力というものに取りつかれて私は今ここにいるわけなんです。何でなのかなと自問しているところがあります。だから今、「実験嫌いな子でも理科好きになるための方策」というテーマで研究もしているんです。つまり実験嫌いな子にも門戸を開くような、そういう科学教育もありなんじゃないかなと思っています。

高橋 先ほど秋山先生は、数学に能力は関係ない、執着心だけだとおっしゃいましたけれども、私は

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