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給食費未納問題の解決策を考える

ギリシャ情勢ともつながるその本質

須藤靖  東京大学教授(宇宙物理学)

 埼玉県北本市の市立中学校全4校が、給食費が3ヶ月以上未納の家庭には給食を停止する旨の通知を出したことが議論となっている。朝日新聞によれば、「文部科学省が全国の公立小中学校583校を抽出して行った調査では、12年度の未納者の割合は0.9%。法的措置をとった学校は1.1%。完全給食を実施する公立小中学校(約2万9千校)全体での未納額は推計21億円余りに上る」とのことだから、もはや個別に対処できるレベルをはるかに超えている。

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 さて、その記事の後には「そのような懲罰的対応ではなく支援を」、「保護者と信頼関係を築く必要」との識者の意見も付け加えられていた。まことにごもっとも。しかし、そのような精神論を繰り返すだけでは、何の解決にもならない。どうすればいいのかをここで考えてみたい。

 この問題の背後には、本来の業務とは思えない事例に現場の先生方が翻弄されているという実態がある。よく知られているように、日本の、特に小中学校の先生方の忙しさは異常だ。生徒たちとじっくり向き合えるはずの貴重な時間を奪い去るような雑務からは極力解放してあげるべきだ。給食費未納問題を考えるとき、この視点を欠いてはならないと思う。

 この問題の難しさは、経済的に払えない家庭と、払えるにもかかわらず払わない家庭が混在している点である。前者に対しては適切な支援が必要である一方、後者に対しては結局、今回のような対応しかないのではあるまいか。単に現場の中学校任せにしているだけで明確な方針をたてないでいては、事態を悪化させるだけだ。北本市の場合で言えば、該当する43名全員が納付するか、納付する意思を示したという。必ずしもそうならなかった場合でも、このような明確な態度を示した結果として本当に支援を必要とする家庭を把握できれば、はるかに細やかな対応が可能となるはずだ。

 「罪のない子供に親の責任を押し付けるべきではない」という意見もよくわかる。しかしそれでは、払えるにもかかわらず払わない家庭をそのまま容認することが子供の為になるかどうかは大いに疑問である。

 いずれにせよ、これは北本市だけの問題ではない以上、早急に国レベルでの指針を明示し、現場で対応せざるを得ない人々の心理的負担を少しでも軽減すべきである。その場合、

1) 義務教育での給食費は税金でまかない、各家庭から徴収しない。

2) 給食を廃止し、各自が昼食を用意する。

という選択肢がありえる。

 払えるのに払わない家庭が「義務教育だから無償であるべきだ」などと言ったら正直かなり不愉快な気もするが、この少子化の時代においては1)は極めて合理的である。このための増税であれば、他の目的に比べて国民の理解も得られるのではなかろうか(給食を実施していない学校に通っている生徒の家庭には、相当額を給付すれば良い)。

 逆の意味での「平等性」という見地からは2)も検討に値する。高知県の田舎の公立小中学校出身である私は、一度も学校給食を食べたことがない(牛乳だけは配られていた。ただし、低学年の頃はアルミ製の容器につがれた脱脂粉乳だった)。クラスの半数以上は農家であり、お母さん方は毎日忙しい中お弁当を作っていた。また、お弁当を持って来られない子供(1、2割いたと思う)のために、お昼休みには近くのパン屋さんが校内でパンを販売していた。今だとすぐ、いじめにつながるといった意見が出るに違いないが、少なくとも当時の我々はそんなことは全く気にしなかった。単に当たり前だったのである。

 といっても、 ・・・続きを読む
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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし)  東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『三日月とクロワッサン』、『主役はダーク』『宇宙人の見る地球』(いずれも毎日新聞社)などがある。

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