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日本に戦争博物館をつくろう

「継承」「不戦」という戦後70年安倍談話と広島・長崎平和宣言の共通項にこそ注目を

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

 8月14日、安倍首相戦後70年談話が発表され、様々な評価がなされている。総合的に見れば、先日の21世紀構想懇談会の報告書に沿った内容だったといえるが、多様な意見を反映しようとしたのか、どうも「官僚作文」的な表現が多かった印象だ。これに対し、8月6日、9日に発表された広島市長、長崎市長の「平和宣言」は、被爆70年という特別な年にふさわしい心に残るよい宣言であった。

拡大戦後70年談話を発表したあと、記者の質問に答える安倍晋三首相=14日午後、首相官邸、井手さゆり撮影

 しかし、本論は、安倍談話と平和宣言の違いについて論ずるのではなく、むしろ「共通項」に注目したい。戦後70年で出されたこの三つの重要な宣言・談話に込められた共通の思いは、安全保障関連法案で対立の続く現状においても、共有できるメッセージとして極めて重要である。ここでは二つのキーワードを上げたい。第一に「継承」、第二.が「不戦」である。このキーワードを単なる宣言や談話に終わらせるのではなく、具体的な行動へとつなげていくことが戦後70年の我々の重要な使命ではないだろうか。

 まず「継承」である。広島・長崎平和宣言は、それぞれ「被爆者の平均年齢が80歳を超えた」ことを挙げて、「被爆の実相を守り…次世代に伝えるための取り組みを強化する」(広島)、「私たちに必要なことは、その記憶を語り継いでいくこと」(長崎)と述べている。安倍談話では、「過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります」と述べている。すでに、広島・長崎では、被爆2世たちの語り部のみならず、若者が自らの言葉で被爆体験やその脅威を語る「伝承者」が登場している。しかし、被爆体験のみならず、戦争全体、特に加害者であった日本が犯した様々な事実について、若者を含め私たちが「正面から向き合う」教育やそのような「場」はまだ存在していないといってよい。

 そこで、筆者は「(平和のための)戦争博物館」の設立を提唱したい。筆者は海外諸国を訪れる際、時間があれば、各地の「戦争博物館」あるいは関連する施設を訪問することにしている。戦勝国、敗戦国、それぞれの立場がどうしても反映されがちではあるが、日本では学べない戦争の歴史を学ぶことができる。これに対し、日本で最も有名な戦争博物館が靖国神社にある「遊就館」だというのでは、「戦争体験や歴史に正面から向き合う」にはとても不十分である。

 この戦後70年を機に、戦争を正面から取り扱う国立の「戦争博物館」を建設するのが良いのではないだろうか。全戦没者の慰霊碑も建立し、靖国神社に行かなくても、戦死者(日本国籍にのみならず、国内外の捕虜収容所などで亡くなった方々も含む)への慰霊が心置きなくできる場も併設する。このような場所を設立すること自体が、歴史の検証にもなり、戦争の実態を次世代に継承するために必要な具体的行動の一つであろうと思う。

 第二に「不戦」の誓いである。広島・長崎はともに「平和宣言」であって「非核宣言」ではない。原爆が ・・・続きを読む
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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