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再認識した「噴火」という言葉のあいまいさ

防災の日を前に、大湧谷の活動から記憶をたどる

米山正寛

昭和火口から噴気を上げる桜島(2015年8月15日)拡大昭和火口から噴気を上げる桜島(2015年8月15日)
 御嶽山、浅間山、雌阿寒岳……、南の方では桜島、阿蘇山、口永良部島……と各方面から噴火や噴火警戒レベル引き上げの報道が相次ぎ、日本列島の火山が騒がしい。その中でも箱根大涌谷で起こっている火山活動は、決して大規模とは言えないが、国内有数の観光地に大きな打撃を与えている。そして、その騒動の中で、火山防災と密接に関わる噴火という言葉の使い方や伝え方について、考えさせられる事態も起こった。

激減した観光客

 大涌谷の活動を振り返ると、4月26日から火山性地震の発生回数が増加し、この頃から噴気の勢いも増した。5月6日には、噴火警戒レベルが1(平常)から、火口周辺への立ち入りを規制する2(火口周辺規制)へ引き上げられ、ゴールデンウィーク中の観光地を直撃した。その後も活動は収まらず、6月30日には小規模な噴火の発生が今回の活動の中で初めて確認され、レベルも3(入山規制)へと上がり、避難指示エリアも火口域から半径1km以内に広がった。これで箱根への観光客の足は、ますます遠のく事態となった。

 こうした状況が続いていた7月21日にも噴火が起こったが、それを受けた気象庁による説明は「噴火だが噴火と記録せず」という内容だったことが報道され、議論を呼んだ。気象庁の噴火の定義は「火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象」だという。説明の意図は、この条件は満たすが、記録を残す条件は満たしていない、ということだったらしい。そもそも噴火の規模には大小があるので、気象庁は固形物の噴出距離がおおむね100~300mの範囲を超すものを噴火として記録するとした「噴火の記録基準」を決めている。ただ、記事が出るやいなやツイッターでも話題になり、「噴火じゃないの?」「論理的に矛盾している」といった戸惑いの声も目立ったそうだ。気象庁の真意はともかく、観光客の激減という社会的影響の大きさから、噴火と言いたがらない立場を取った結果だ、との見方も流れた。

伊豆大島をめぐる議論

伊豆大島・三原山の大噴火(1986年11月)拡大伊豆大島・三原山の大噴火(1986年11月)
 このニュースに接して、噴火という言葉が適切かどうか、過去に同じような議論を聞いた記憶がよみがえってきた。それは、伊豆大島で約1カ月間の全島避難を経験した1986年からの火山活動がなお継続していた1988年、1月25日と27日に山頂火口で噴煙が上がった時だった。これを受けて気象庁は「噴火」と発表したが、火山噴火予知連絡会に参加する科学者の中からは「火口内壁の崩落に伴って噴煙が上がった」との説明がなされた。いわば、がけが崩れて土煙が上がったのを噴火というのが適切かどうか。気象庁の定義に添えば「噴火」だとしても、果たして科学的に見て「噴火」と呼べるのかと、疑問が示されたわけだ。 ・・・続きを読む
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筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 森林文化協会事務局長補佐

公益財団法人・森林文化協会事務局長補佐(学術、出版)兼「グリーン・パワー」編集長。朝日新聞の科学記者を経て現職。とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せ、取材活動を重ねてきた。森林文化協会は、「山と木と人の共生」を基本理念として1978年に設立された朝日新聞創刊100周年記念の財団。
森林文化協会公式サイト

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