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大村さんに聞く 「人と同じことをしてもダメ」

ノーベル医学生理学賞 自然から宝を見つける方法

瀬川茂子 朝日新聞編集委員

拡大ノーベル医学生理学賞受賞が決まった大村智さん
 「妻の写真はいつも持ち歩いていますよ。持ってないと怒られますからね」

 朝日新聞のインタビューで、財布の中から亡き妻の写真をとりだしてみせたのは、今年のノーベル医学生理学賞受賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授(80)。

 写真といっしょに財布から出てきたのが、小さいポリ袋。いつでもどこでも、よさそうな土を見つけたら採取するためだという。スプーン1杯分でいい。その中には無数の微生物が含まれ、未知の有用な物質を作りだしている可能性がある。

 自然界から宝物を見つけ出した大村さんのスクリーニング法を、ノーベル賞委員会は「独特で卓越した技術」と評価した。

 どうすごいのか。北里大の大村研究室を見せてもらった。最初の作業はとても地味なものだ。土を水にまぜて薄め、シャーレの培地にのせる。微生物が増えてくると点々とコロニーができてくる。一つのシャーレの中に、色も形も広がり方も違う、さまざまなコロニーができてくる。

  大村さんの弟子の塩見和朗・北里大教授によれば、1グラムの土からコロニーを分離すると、およそ1000万個の細菌、100万個の放線菌、10万個の真菌が得られるが、土壌によって、数や比率は大きく変わる。コロニーにならなかった微生物を考えると、その数はその10倍とも100倍ともいわ、環境によって大きく異なるという。コロニーの中から良さそうなものをピックアップして、1種類ずつ増やす。この際、これまで使ってきたものと、できるだけ違う微生物を選びだすのがコツだという。

  整然と増やしたものを、培養液入りの試験管に移す。微生物が作りだすさまざまな物質が、液中に含まれるようになるので、この抽出液を使って実験を進める。たとえば、細菌を殺す性質をもつ物質があるかどうかを調べようとするなら、細菌を増やす培地の上に、小さい円形の濾紙をおき、抽出液をしみこませる。抽出液に細菌を殺す性質があれば、濾紙の周辺だけ細菌が増えない。こうしたスクリーニングを重ねて、目的にあいそうなものが出てくると、物質を精製して、さらに本格的な研究を行う。

産学連携の先駆者

 オーソドックスな方法のようだが、大村さんは、「人と同じことをしてもだめ」と言い続けてきた。 ・・・続きを読む
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筆者

瀬川茂子

瀬川茂子(せがわ・しげこ) 朝日新聞編集委員

1991年朝日新聞社入社。大阪本社科学医療部次長、アエラ編集部副編集長などを務める。共著書に「脳はどこまでわかったか」(朝日選書)、「iPS細胞とはなにか」(講談社ブルーバックス)、「巨大地震の科学と防災」(朝日選書)など。

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