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COP21の成功。危機バネが働いたからか。

これまで困難だったことをパリはどのように解決した

小林光

 12月12日のパリ・ブールジュは、歴史を画する会合になった。地球温暖化対策が世界全体をカバーするように大きくステップアップされることが決まったのである。その合意結果は、既に報道されているし、それについてのさらに細かい実行要領などの合意には今後に長い年月が掛かろうから、本稿は、合意された事項自体を議論しない。

 ここでは、COP21の準備過程も振り返りながら、なぜ、円滑に合意がなされたかを考え、合意をもたらしたそのモメンタムを今後に維持し強化していく方策を考えてみたい。

天からの警告があった

 論者のように京都議定書の誕生に係わった者から見ると、今回の合意は隔世の感がある。それは、第一に、先進国以外の、新興国や途上国に対しても地球環境を守る行動を取ることを義務付けたことである。

 今から18年前、京都のCOP3は、その冒頭での議題セッティングに際して、京都の約束の次のステップには、非先進国も何らかの行動を取ることも視野に入れて新たな国際約束の検討を始めよう、といった穏当な内容の、決議案を議論しよう、と、先進国グループは試みた。しかし、決議ではなく、その検討を議題にあげようとするそのことだけで、締約国会議の表舞台は1週間停まってしまったのである。

拡大COP21では、フランスのファビウス外相の議事進行がさえた。

 それに対し、今回は、新興国も、それ以外の途上国も、目標を掲げ、また定期的に更新しながら、対策に努め、そしてその努める姿を報告し、また、何らかのレビューに供することが決まった。この内容自体は、1992年に採択された気候変動枠組条約が先進国に義務付けた内容とほぼ同じか少し詳しいものを今回は非先進国に広げるということであったが、そう見れば、そうなるべくしてそうなった、と言えて、驚くことはないのかもしれないけれども、やはり、京都からの18年間の時の流れを強く感じるのである。

 この合意の裏には、途上国における対策を支えるための国際的な資金の裏打ちに関して一定程度の説得的な政治意思が示されたことなど国際社会の意図的な努力(後述)もあるが、まず本質的には、残念なことに、世界の自然環境の劣化が著しくて、もはや対策強化の機会を逃せなくなっていたということがあるのではなかろうか。

 日本の鬼怒川水害は記憶に新しいが、海外では気候災害はますます頻発している。今回のCOP21には、ゴア元副大統領も駆けつけスピーチしたが、その内容は、こうした気候災害を伴う地球の自然の悪化への警鐘で、シリアなどを震源地にするテロも、根源的には地球環境の劣化を遠因としているといった内容である。こうした認識が通底音として共有されていたことに、一層の説得力を加えたのが、パリのテロであったようにも思う。テロなどの脅威の前に、世界各国が争っていて結束した対策が取れない、といった姿は、もう見せるわけにはいかない、ということである。

そして、地の利もあった

 こうした、いわば、天の采配・警告のほかに、今回の合意を支えた要因には、人類側の努力もあった。それは ・・・続きを読む
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筆者

小林光

小林光(こばやし・ひかる) 慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)

慶応義塾大学特任教授(環境経済政策)。工学博士。1949年生まれ、慶応義塾大学経済学部卒業。環境庁(省)では、環境と経済、地球温暖化などの課題を幅広く担当。1997年の京都会議(COP3)の日本誘致のほか、温暖化の国際交渉、環境税の創設などを進めた。環境事務次官(2009~11年)時代には水俣病患者団体との和解に力を注ぐ。自然エネルギーをふんだんに利用したエコハウスを自宅にしていることで有名。趣味は蝶の観察。

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