修了時に半数以上が平均440万円の借金という衝撃
2016年01月18日
博士号を得た人たちの初の追跡調査を文部科学省の科学技術・学術政策研究所がまとめた。職に就いた人の中で大学や公的研究機関などの「アカデミア」に入ったのは約6割、民間企業など非アカデミアが4割で、アカデミアの8割以上が任期制雇用だったのに対し、民間企業では正社員がほとんどで、所得も比較的高い。だが、処遇に満足しているかどうかは、収入とあまりリンクしていないという興味深い結果だった。一方、留学生や社会人学生を除いた学生(課程学生)は、博士修了時に半数以上が平均440万円程度の借金を抱えていることも明らかになった。博士課程進学は経済的に見合うのか、という観点からの結論は、「ビミョー」としか言いようがない。
調査は12年度中に日本の大学院の博士課程を修了した全員が対象で、約5000人が回答(回収率38.1%)した。かつて02年~06年度の博士課程修了者について大学を通じて全数調査をしたときは、進路先不明者が30%を超え、大学を通じた調査の限界があらわになった。今回は、本人がWEBを通じて直接回答する方式をとったが、回収率は4割に届かなかった。しかし、調査を実施した第一調査研究グループは「90年代から博士の追跡調査をやっている英国も回答率は4割程度。英国と同程度と受け止めている」と話す。
日本で博士号取得者が急増したのは、90年代に入ってからだ。日本学術振興会が85年度に特別研究員制度を創り、学生に研究奨励金を出すようにし、当時の科学技術庁系の組織も追いかけるように同様の制度を作ったことが効いている。さらに第1期科学技術基本計画(1996年度~2000年度)で「ポスドク1万人計画」が打ち出され、博士号を取得したあとの研究職「ポストドクター」を大学や研究機関が積極的に雇うようになった。そのための資金を文科省が出したわけである。ポスドクが研究を担っている米国のやり方にならった、つまりは真似したのだった。
しかし、
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