論文不正の告発から解雇処分までの4年間に起きたこと
2016年01月28日
岡山大学が薬学部の教授2人を昨年末に解雇した。2人は「論文不正の告発が解雇につながった」と主張、年明けに処分無効と慰謝料を求めて岡山地裁に提訴した。ツイッターなどでは「不正を告発したらクビ?」と驚きと憤りが広がっている。しかし、取材をしてみると、それほど単純な話ではない。始まりは、薬学部教授が博士論文の不正に気づいたことだった。ところが、その後に次々と異例の事態が起きた。ついには、学長や学部長ら35人で構成される教育研究評議会が2人に対して「岡山大学教授に必要な適格性を欠く」という、これまた異例の判断をして解雇を決定した。そこまでの経過を追う。
解雇されたのは、森山芳則・元薬学部長と榎本秀一・元副学部長。森山氏は岡山大学薬学部を卒業し、帝京大や広島大、大阪大学で助手や助教授を務めたあと、1998年に岡大薬学部教授に就任した。薬学部が69年に設置されてから、初めての岡大卒の教授だった。生体膜の生化学が専門で、現在に至るまで研究室のメンバーとともに数多くの論文を出している。
4年前の1月、薬学部の大学院生の博士論文に不正が見つかり、大学院医歯薬学総合研究科に設置された調査委員会が、この論文は博士号審査からはずすと決めた。森山氏によると、この過程で社会人ドクターコースに入ってすでに博士号を得ていた製薬企業社員2人の論文に、他人の修士論文の引き写し部分があることが発覚。これを報告したとき、森田潔学長から「これ以上、騒がないで欲しい」と隠蔽を指示されたと言う。一方、学長側は「不正隠蔽の指示など一切していない」と主張する。
その真相は判断できないが、この後、事態は思わぬ展開を見せる。2012年から翌年にかけて、森山氏や榎本氏からハラスメント(嫌がらせ)を受けたという申し立てが複数の薬学部教員から出たのである。大学内部の人によると、個人を罵倒するメールを薬学部教員の多数に送るといった行為などがあったらしい。しかし、学部長選挙で森山氏は薬学部長に再選され、榎本氏が副学部長に選出された。その後、ハラスメント防止委員会は計6人(教授1,准教授4、すでに大学を辞めた元教授1)からの申し立てを一括して調査すると決めた。
調査続行中の13年11月に学長選があり、
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