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清原容疑者を責めて何になる?

覚醒剤犯罪を減らすためにやるべきこととは

高橋真理子

拡大オリックス在籍時の現役引退セレモニー=2008年10月1日、大阪市
 元プロ野球選手の清原和博さんが覚醒剤所持容疑で逮捕された。「もしかすると彼はホッとしたのではないか」と薬物依存症患者を多く診てきている国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長の松本俊彦医師はいう。やめたいと思ってもやめられないでいる患者たちから「捕まってホッとした」という言葉をしばしば聞いてきたからだ。

 使い始めるとやめられなくなるのが、依存症という病気だ。最初は快感のために薬物を使っていたのが、やがて薬物を使わない苦痛から逃れるために使うようになる。いわゆる体が薬を求める状態である。こうなった人を薬から遠ざけるのに、刑事罰は無力だ。それは、覚醒剤で捕まる人の約6割が再犯者であるという事実を見れば容易にわかる。刑務所に入っても依存症は治らないから、再び捕まってしまうのである。

 では、どうしたらいいのか。本人の回復のために粘り強く治療とケアを提供し続けることが必要だと、海外の多くの研究が明らかにしている。海外に比べて日本の取り組みは遅れている。ビッグスターの逮捕が、逮捕者を「罪人」と見るだけで「病人」と見ようとしなかった日本社会を変えるきっかけになってほしいと思う。

 覚醒剤を使うのが悪いことであるのは間違いない。だが、被害を受けるのは使用者自身だ。そして、覚醒剤で捕まる人を減らしたいとは誰もが思うことだろう。それには、覚醒剤の密輸や売買行為の摘発が必要なのは当然だが、再犯者を減らす方策も大事だ。何しろ、捕まる人の6割が再犯者なのだから。そのためには捕まった人を「罪人」と見るのではなく「病人」ととらえて治療プログラムを受けてもらわなければいけない。遅れていた日本でも、司法の世界ではようやくこういう認識が共有されるようになった。

 しかし、世間では「罪人」としか見ない人がまだまだ多い。たとえば2月4日付朝日新聞朝刊に載った西武の渡辺久信・球団本部シニアディレクターのコメント。「数年前から(薬物使用が)うわさには出ていたが、キヨに限ってはないと信じていた。結果的に(性格が)弱いんだろうな」と厳しく指摘した、とある。こうやって、「性格が弱い」と切り捨てることが、さらに本人を追い詰め、痛めつけ、薬に頼らずにはいられなくしてしまう。本人を責めることは「覚醒剤の使用を促し、依存症を重症化させる」(松本医師)ことに、多くの人は気づいていない。

 松本医師たちは、 ・・・続きを読む
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筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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