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餌付けされるシマフクロウ

野生動物の無事を願うことと自然保護は別問題

松田裕之

   2015年12月5日の朝日新聞 に「シマフクロウ、あえて公開」という記事が載った。このような写真が掲載されたので、朝日読者には憶えている方も多いことだろう。

拡大羅臼のある民宿で撮影できるシマフクロウ=神村正史撮影
これは知床世界遺産近くのある民宿で、本来は営巣地などを公開しない絶滅危惧種のシマフクロウを客に見せていることを紹介したものだ。この記事が出てから、シマフクロウ保護増殖検討委員会など、自然保護関係者の間で議論が紛糾している。

  シマフクロウはかつて激減し、現在は少し回復して北海道に約140羽生息しているという。知床以外の個体の多くは環境省事業で与える餌に依存している。知床では、環境省事業で餌を与えていないが、ほとんどは巣箱で繁殖している。完全な野生とは言えない。

自然に親しむことが絶滅危惧種の野生を失わせる

  フクロウは夜行性だ。このような見事な写真を撮るには特殊な機器を使い、幾夜も粘ってようやく撮れるものと考えがちだが、朝日記事にある通り、よいカメラと腕があれば一晩でほぼ確実にこのような写真が撮れる。民宿の照明設備の工夫もあるが、最大の問題は餌付けである。せっかく人の餌に頼らずに個体数を回復させつつある知床のシマフクロウが、観光目的のために餌付けされている。

 「タンチョウの給餌はよくて、なぜこの餌付けはいけないのか」と思うかもしれない。いいや、釧路のタンチョウも、豊岡市のコウノトリも、鹿児島県出水市のツルも、そろそろ給餌と餌付けをやめるべき時期に来ている(参考)。。しかし、餌付けをやめさせればよいとか、餌付けが絶対悪いというものではない。何より大切なことは、 ・・・続きを読む
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筆者

松田裕之

松田裕之(まつだ・ひろゆき) 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、Pew海洋保全フェロー

京都大学理学部および同大学院博士課程卒業(理学博士)、日本医科大学助手、水産庁中央水産研究所主任研究官、九州大学理学部助教授、東京大学海洋研究所助教授を経て 2003年より現職。GCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー(2007-2012)、日本生態学会元会長、日本海洋政策学会理事、個体群生態学会副会長。ヨコハマ海洋みらい都市研究会共同代表。

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