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核セキュリティサミットの読み方(下)

日本の再処理政策に集まる厳しい眼差し

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

 最後の核セキュリティサミットは、成果と課題を明らかにしつつ終わった。「上」で示したような評価と課題の中で、果たして日本の取り組みはどう評価されたのか。

プルトニウム在庫量問題: 再処理政策への疑問

拡大プルトニウムなどを米に運ぶ輸送船=2016年3月22日、茨城県東海村、堀英治撮影
 今回は、前回の高速臨界集合体(FCA)からのプルトニウム返還に続き、京大研究炉の高濃縮ウランの返還を公表し、日米共同声明でもその点が評価された。首相発言の中には「核物質の最小化・適正管理に関し、『利用目的のないプルトニウムは持たない』との原則を実践」との内容が含まれているが、48トンも抱えている在庫量をどう削減するかについては、一切言及がなかった。これでは、在庫量を「最小化する」という約束に対する真剣さが問われるのではないか。

 おりしも、3月17日の上院外交委員会でカントリーマン国務次官補が日本と中国の再処理政策に懸念を表し、プルトニウム在庫量問題が再処理政策の見直し議論に当然のことながらつながることが明らかとなった(カントリーマン国務次官補の関連発言については、核情報のサイトを参照のこと)。

 このカントリーマンの証言にはいくつかの重要な指摘がある。整理すると以下の3点に絞られる。

1) プルトニウム在庫量の増大は、核セキュリティのみならず、核不拡散の観点からも地域に緊張をもたらす重要な安全保障課題である。

2) 核不拡散、核セキュリティの観点から言えば、これ以上プルトニウム在庫量が増加することは避けるべきだ。

3) 原子力平和利用の権利は認めるが、現時点で再処理の経済合理性はない。以上を考えると、できれば、世界中で再処理を実施しないことを米国は望む。

 上院の証言では日本や中国を名指しで批判し、二国間原子力協定による影響力を行使してでも、再処理を抑制すべき、との発言までした。しかし、その後の記者会見では、「(米国は再処理に反対だが)、日本の核燃料サイクル政策の決定については、賛成も否定もしない」とのコメントを残すなど、日本との原子力協定改定交渉の可能性を否定する発言をしていた。それでも、「米国政府は再処理には反対」と明確に述べており、日本に対する発言との関係は曖昧(あいまい)なままだ。しかし、この曖昧で矛盾したカントリーマン国務次官補の発言こそ、この問題の複雑さと機微さを表しているともいえる。

 その分、日本の責任は重い。再処理政策の行方は二国間のみならず、地域の安全保障、ひいては世界の安全保障に大きな影響を及ぼす可能性を秘めているからだ。

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 プルトニウム在庫量問題はNGO版サミットでも注目され、その中で日本の再処理政策の行方が注目された。こちらでは、 ・・・続きを読む
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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