シャープを傘下に収めた鴻海がかかえる労働問題と環境問題
2016年04月30日
液晶の高い技術をもつといわれる日本のシャープが台湾の鴻海社の傘下に入った(2016年春)。鴻海社は、アップルのiPhoneのEMS(受託製造サービス、製品の設計、試作、部品調達、製造、発送、補修などを一括して担う)として、主に中国国内に約30の工場を持ち、100万人の従業員がいる。世界にフォックスコンという名前で知られ、鴻海社の連結売上高は2014年度で4兆2131億台湾ドル(約15兆1700億円)に達した。
しかし、中国国内の工場は、従業員の飛び降り自殺(2010年から16件)、長時間労働(1日10時間以上)、未成年労働、大規模なストライキや暴動衝突などの労働問題、さらに環境汚染のために、「搾取工場」の典型例として世界に知られている。鴻海社の経営と戦略を詳細に研究した中国出身の研究者・喬晋建(熊本学園大学教授)による『覇者・鴻海の経営と戦略』(ミネルヴァ書房、2016年)に基づいて、その実態の一端を見てみよう。
・2011年5月20日夜に、成都工場で死者4人、負傷者18人を出す大規模な爆発があった。2010年に稼働し始めたこの新工場はiPad生産の主力工場で、約2万人の従業員が働いている。操業停止2日後の23日に生産を再開し、大きな被害がなかったようである。爆発の原因について、製品を研磨した際に生じた粉末に引火したという説や空調設備が爆発した説などが報じられたが、明確な結論は公表されなかった(182頁)。
・鴻海の江蘇省昆山工場からの排水が太湖流域の河川を金属汚染していると2013年7月に報道された。8月2日に開かれた記者会見の場で、鴻海昆山工場側は、中国の環境保護法に違反することはなく、国の基準を満たしていると説明した(187頁)。*『WSJ日本語版』2013年8月5日付けによれば、「中国、アップルの台湾系下請け工場のフォックスコンなど2社を調査―重金属汚染の疑い、昆山では電子コネクターや回路基板を製造する必要なメッキ工程、プリント基板(ユニアイクロン社)」がある。
・2014年9月に中国のマスコミが鴻海工場の化学汚染問題を取り上げていた。
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