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野生に戻れ、コウノトリ

「鶴の恩返し」の本当の主役

大谷剛 兵庫県立大学名誉教授(動物学)

 4月22日に「野生のトキのひな生育順調」というニュースが入ってきた。新潟県佐渡島のトキは日本産種の絶滅(2003年)、外国産種の導入(中国産のものはトキと同一種とされている)、野生復帰(2008年から9回放鳥、計142羽)の道をたどってきている。同じような道をたどって注目されているコウノトリは、1965年から保護増殖事業の対象になっているが、1971年に日本産は絶滅してしまった。その後、兵庫県豊岡市で人工飼育をして増殖を進め、2005年を「放鳥元年」として野生復帰の道を歩んでいる。

拡大コウノトリの巣で卵のようなものをくわえるカラス=4月5日、徳島県鳴門市、朝日新聞読者提供

 4月6日に衝撃ニュースがあった。徳島県鳴門市で産卵して注目されていたコウノトリの卵がカラスに持ち去られたという。記事をよく読むと、2日前から抱卵行動に熱心でなくなっていたので、卵はもはや生きてはおらず、ほとんど放置していたところをカラスが目ざとく盗み出した可能性が高い。雌雄で交代に抱卵していたら、カラスに盗まれることなどないと思われる。鳴門市では3月16日に産卵が確認され、「刺激しないようにしましょう」という看板をあちこちに設置し始めたところだった。何とも残念である。

 兵庫県はコウノトリの野生復帰を目指して「コウノトリの郷公園」を1999年に開設した。野外への放鳥が始まったのは前述のように2005年で、2016年4月現在の放鳥総数は75羽である。その飛来先は全国の41府県280市町村にも及ぶ。2014年には国境を越えて韓国でも確認された。2013年には兵庫県の養父(やぶ)市と朝来(あさご)市でも放鳥が行われた。2015年には千葉県野田市と福井県越前市でも行われ、新たな繁殖地の創設につながるものと期待されている。

拡大鳴門市内に立てられた看板=3月17日、中村律撮影

 カラスに卵を盗まれたという鳴門市のコウノトリは、豊岡市で育ったオスと朝来市で放鳥されたメスのペアである。豊岡市以外の巣作りとして注目され、繁殖の環が広がりそうだと期待も高まっていた。

 鹿児島県の民話に「コウノトリの恩返し」というのを見つけた。貧しい母と息子のの物語で、 ・・・続きを読む
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筆者

大谷剛

大谷剛(おおたに・たけし) 兵庫県立大学名誉教授(動物学)

兵庫県立大学名誉教授、神戸女学院大学非常勤講師。1947年、福島県生まれ。東京農業大学卒業後、北大大学院に進み、(有)栗林自然写真研究所、(財)東京動物園協会を経て、兵庫県立人と自然の博物館と兵庫県立大学を2013年に定年退職。専門は昆虫行動学。『ミツバチ』(偕成社)、『昆虫のふしぎ─色と形のひみつ』(あかね書房)、『昆虫─大きくなれない擬態者たち』(農文協)など。

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