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オバマ広島訪問への期待

核抑止に依存しない安全保障政策への第一歩を踏み出して欲しい

鈴木達治郎 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

 2016年5月27日にオバマ大統領が現職の米国大統領として初めて被爆地広島を訪問する。長年、被爆者をはじめ、核軍縮・不拡散専門家・市民団体が要望してきたことが、ようやく実現する。はたして、この訪問は何をもたらすのか。第二次世界大戦の清算につながるのか。現在の日米同盟の強化か。そして、核兵器のない世界への大きな一歩か。おそらく、今回の訪問を巡って、様々な期待や思惑が絡み合っているに違いない。筆者はこれを、過去、現在、未来の3つの視点から期待すべき成果についてまとめた。

過去:戦争の過ちと不戦への誓い

拡大G7外相会談のとき、原爆慰霊碑に献花するケリー米国務長官(中央右)ら=2016年4月11日、広島市中区、伊藤進之介撮影
 今回の訪問で、被爆地においてもオバマ大統領に謝罪を要求する声はもはや少数派であり、謝罪が今回の焦点ではないことは明らかだろう。だからといって、第二次世界大戦の傷跡、過去の過ちに対して、何の反省も思慮もいらないということにはならない。昨年夏の戦後70年談話発表後も、戦争の過ちに対する日本の対応には依然批判が多い。今回の訪問を機に「日本の現役首相もパールハーバーを訪問すべき」だとか、「中国・韓国への謝罪が先だ」といった声が聞かれるのもそういった視点からだろう。また、「バターン死の行進」を経験した米退役軍人からは、日本がいまだに当時の米兵捕虜に対して謝罪や賠償を十分にしていない、との観点から、広島への訪問に対して慎重さを求める書簡が送られた。

 今回のオバマ訪問は、そういった過去への過ちについて、日米首脳がともに戦争で犠牲になった方々への追悼と、二度と戦争の過ちを繰り返さないことを誓うことが期待される。その後安倍首相が別の機会に真珠湾を訪問すればより望ましいといえる。

現在:日米関係と核セキュリティ

 今回の訪問の一つの要素として、日米関係の強化があることも間違いないだろう。すでに安倍首相、ケネディ大使も、そのような趣旨の発言があったと報道されている。ただ、あとで述べるように、単に日米関係の強化のためだけであれば、広島訪問まで行う必要はない。被爆地への訪問ならではの、日米に共通する課題について何らかの新たな対応が必要だ。

 その視点から筆者が注目するのは、核セキュリティ対策である。世界に存在する核兵器に転用可能な核物質の在庫量を削減することで、日米が協力することはすでに核セキュリティサミットでも述べており、日米ともに悩みを抱えているプルトニウム在庫の削減にコミットすることができれば、大きな意義をもつ。

未来:核兵器のない世界への転換点

 最後に、今回の訪問で最も大きな意義をもたらすと思われる ・・・続きを読む
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筆者

鈴木達治郎

鈴木達治郎(すずき・たつじろう) 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授。1951年生まれ。75年東京大学工学部原子力工学科卒。78年マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。マサチューセッツ工科大エネルギー環境政策研究センター、同国際問題研究センター、電力中央研究所研究参事、東京大学公共政策大学院客員教授などを経て、2010年1月より2014年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理を務め、2014年4月より現職。またパグウォッシュ会議評議員を2007~09年に続き、2014年4月より再び務めている。

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