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未来へ伝えたいハナノキのある里山景観

開発の流れが最大の自生地に迫る

米山正寛 ナチュラリスト

ハナノキの花(雄花)。ハナノキは雌雄異株なので雄木と雌木があるハナノキの花(雄花)。ハナノキは雌雄異株なので雄木と雌木がある
 ハナノキというカエデの仲間の樹木がある。秋に目を奪われるカエデ類の紅葉に比べると、春先に咲くその花はとても小さい。それにもかかわらず、この種がハナノキと名付けられたのは、葉が開く前に咲く赤い色の花が、まだ冬枯れの景色を残した里山へほんのりとした温かさとともに春の訪れを告げたからだろう。そんなハナノキは、本来の自生地が岐阜、愛知、長野という3県の里山湿地に限られており、「東海丘陵要素」とも呼ばれる地域性の高い種の一つとなっている。だが、その自生地も里山の開発などで少しずつ失われてしまい、現在は30カ所あまりとされ、自生が確認できている個体は全国で2000本程度と少ない。このため環境省は絶滅の恐れのある種を掲げたレッドリストで、絶滅危惧Ⅱ類に指定している。

リニア駅への連絡道を計画

 このように数少ない自然界のハナノキに今、大きな危機が迫っている。自生個体の半数近くが生育している岐阜県中津川市千旦林地区の岩屋堂集落を貫く形で、自動車専用道路を整備する計画が進んでいるためだ。

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